deputy
一方美紗は少し違った。一体こんな不思議なラブレター、いや、恋文と言うべきか。を、どんな人間が書いたのだろうかと興味を持った。
「便せん一枚だけで送るっていうのは失礼にあたるんだよ。だから白紙を一枚余分に入れるの……でもさ、やっぱりラブレターなんてちょっと嬉しい、かも」
「ええ!? 嘘でしょ? あんたこんな薄気味悪いラブレターなんかが嬉しいの!? それに何それ? 便せんが一枚だけだと失礼とか意味分かんないんですけど! 良いじゃん、一枚で! 私怒んないよ、別に便せん一枚しか入ってなくても! それに紙勿体ないじゃん!」
口からポテトを飛ばしそうな勢いで京子が眼を丸くする。
京子はスタイルも良く、綺麗な顔立ちをしているため男子にも人気がある。ラブレターなども何度ももらっているし、告白されているのも知っている。
そんな京子とは違い美紗は生まれて初めてもらったラブレターなのだ。風変わりでもやはり嬉しいという感情が先立つ。
「便せんはもういいでしょ? 食いつく所おかしいよ。って、ラブレターもらって嬉しいのって変かな?」
「変変変変! ラブレターの内容による! 気持ち悪いって、このラブレター! さっさと捨てちゃいなよ!」
「えっ!? 捨てるの?」
驚く美紗から奪うように手紙をもぎ取ると、京子はくしゃくしゃと丸めて空になったコーラの容器に詰め込んだ。
「ああっ!」
「もう、いいの! どうせ変なヤツなんだから、後生大事にとっとくと呪われるって。ほら、行こう」
そう言うと京子はトレーを持って立ち上がった。
「京子ったら……」
残念そうに京子の手によってゴミとされた手紙がダストボックスに投げ込まれるのを見届けると、美紗は仕方なく立ち上がった。
生まれて初めてもらったラブレターは残念ながら友人の手によって捨てられてしまった。
しかし、美紗は文面をなんとなく覚えていた。
百合のような肌ーーー
風呂場でちゃぷんと自分の腕を浴槽から引き上げ、捻りながら観察する。
運動はあまり得意ではないので、外で遊ぶことも少ない美紗は日焼けも少ない。おかげで確かに色は白い方だと思う。が、手紙にあったように百合のように白いかと言われれば普通の黄色人種の肌色そのものだ。
灼熱の炎のように、私の事を思ってくれてるなんて。一体どんな人なんだろう。