サイコシリアル [1]
「驚かせたようで悪かったね」
場所は変わって、僕の部屋。
四十代前半のオッサン、猿渡仁が言った。
この周辺を管轄する朧気警察署の警部らしい。
そして、斬島の事件を担当する警部。こんなA級犯罪を担当するんだ、相当な腕前だろう。なのに、戯贈に今回の件を依頼した依頼主でもある。
「だから、斬島の犯行は白日の下、人目の付くところで行われると言ったでしょう? あなたは理解力という人間に必要不可欠な力が欠落しているの?」
そして戯贈妄言。こいつは、僕が部屋に戻ると優雅にコーヒーを飲んでいやがった。
そして「案外早かったじゃない、猿渡さん」と一言。猿渡さんを呼び出した張本人がこいつって訳だ。
早く言ってくれよ、と言ったら「だから気を張るのと引き締めるのじゃ生まれる物が違うと言ったでしょう?」と言われたのも言うまでもない。
「でも、本当に戯贈って警察公認の殺し屋なんだな」
僕は思ったことを率直に言ってみた。
この世に警察公認の殺し屋なんて他にいるんだろか。
多分いないな。
「警察公認というよりは、俺公認だよ」
猿渡さんは戯贈変わり話始めた。
「数年前に俺が担当した連続殺人事件でね、戯贈ちゃんに多大なる協力をしてもらっちゃって。偶然、戯贈ちゃんの殺しの対象と俺たちが追う犯人が合致したって訳。それはもう、大きな借りを作ってしまってね。だから俺の独断で戯贈ちゃんは野放し状態。言い方は悪いけどね」
殺し屋を野放しって大丈夫か、日本警察。いや、朧気警察署、もとい猿渡警部。
「俺の部下は本当に無能でね、言うことを聞かないんだよ。皆、職務怠慢。現場検証終わったら俺に丸投げさ」
更に大丈夫か、朧気警察署よ。
「まぁ、俺が黙認しつつ承認してるから別に構わないんだけどね」
「根源はあなただ!」
しっかりしてくれよな。朧気町の治安の為にも。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし