サイコシリアル [1]
【殺し屋・戯贈妄言】
僕は、涙雫 峯拐(なみだ しずく ほうかい)。朧気高校に通う高校三年生だ。 朧気高校は県内では有数の進学校であり、勿論、部活動も盛んだ。要するに文武両道の天才たちが犇めく高校なのである。僕は、中学三年生の頃、『朧気』という独創かつ厨二的な名前に惹かれて勉学に励み、見事にサクラサクを実現させたわけだ。
実に迂闊だった。
元々、中学では中の上から偶然や奇跡が重なりあい上まで這い上がった僕には、授業のスピードそのものがついていけなかった。
何より皆さん効率が良い。
そんな訳で中の上から上、そして下の中へと成り下がった僕は今、全力で人生の分岐点にたたされている。
進路という名のターニングポイントに。
周りの決して友人とは呼べない天才達は、『僕、パイロットになる!』とか『僕、宇宙飛行士になってやんよ!』とか『私は、NASAに行くわ』とか俺からすれば妄言かつ戯れ言を言っている。
次に決して仲間とも呼べない超人達は『はっはー、俺、全日本ジュニアユースに選ばれちゃったよ』とか『あー、早くアメリカ行って本物のアメフトやりてー!』だの『メジャーリーグって夢じゃないよな。通過点だろ』とか、もう敗戦知らずの猛者じみたことを言っている。
勿論、僕も敗戦知らずだ。
戦ったことがないから。
作品名:サイコシリアル [1] 作家名:たし