自分を認める。
翌日、学校で美由紀に会った。
「サイト、見たよ」と言うと、美由紀は少しの間を置いてそう、見てくれたんだ、と何処か悲しそうに笑った。
「……気持ち悪いでしょう?」
「え?」
「私のこと」
美由紀はさっき私に見せた少しだけ微笑んだ表情のまま俯き、独り言を呟くような調子で言った。その笑顔があまりにも悲しそうで、自嘲的で、私は何も言うことが出来なかった。
「嫌だったの。少しでも自分が可愛いと思ってしまう、少しでも希望を持ってしまう、ナルシストな私が。自分がブスだってきちんと認められないような私が。勿論自覚無いわけじゃ無かったけど、でもまだ『ブス』って言われたら傷付くと思ったの。それって、ちゃんと自覚出来てないってことでしょう? 自覚出来てればそんなこと言われても傷つかないもの。女子である私達が『お前は女子だ』って言われるのと同じようなものじゃない」
美由紀はぽつりぽつりと話した。
「だから何も考えずに、私の気持ち悪い欲望を剥き出しにしたサイトを作ったの。リアルの世界で話している人は、思ってても『デブ』とか『ブス』とか『キモい』とかなんて絶対に言ってくれない。けれどネット世界……匿名の世界では、皆本心を言ってくれる。全くの他人にそういうことを言われれば、私、自覚出来るかなって。だから」
突然美由紀は私の両肩を掴み、私に顔を近づけた。美由紀のいつになく真剣な目と向き合う。ああ逃げられない、逃げられないんだと私は思った。
「私には本心を言ってくれて良いんだよ。デブとでもブスとでもキモいとでも、バカでもアホとでもウザいとでも汚いとでも一緒にいたくないとでも。ね? 本心を、本音を私に言ってよ。お願い。あんなサイトやってるような私は、あんなに酷いこと言われてもまだ自覚が足りなくて少し傷付いちゃうような私は、気持ち悪いでしょう? ねえ」
自然と体がぶるぶると震えた。何も言えない、何を言ってもきっとダメなんだろうと私は思った。本当は私の本心を――美由紀のこと大好きだよ、普通に可愛いと思うし、全然気持ち悪くなんかないよ――そんな言葉をかけたかった。でも今の美由紀はそんなこと言っても信じないような気がするし、あの時……サイトを見た時、実際に吐き気を催した自分がいて、それが引っかかり私から言葉を亡くしていた。
せめて美由紀から目を逸らしたかったけれど、何故だか私は取りつかれたように美由紀の目を見ていた。美由紀は色んな感情が入り混じったような、そんな目をしていた。
随分長いことそうやって向き合っていたような気がする。不意に美由紀の手の力が抜け、手は私の肩からずり落ちていった。美由紀は最後に私ににこりと笑いかけると、何も言わずに去っていった。
私はその場に呆然と立ち尽くした。始業のチャイムでやっと我に返り席に着く。先生が入ってきて起立、礼をする。いつもと同じ、日常だった。けれど私はこっそりポケットの中のカッターを握りしめた。私は、親友を失った悲しさと、親友を傷付けた罪の意識に支配されていた。