大きな猫14
「愛人やったら、パパの言うことは聞け。」
「しゃーないのー。ん? あれ、総務部長いやはったんですか? 」
ふたりして視線を戻したら、会議室の扉が開いていて、総務部長が。声をかけあぐねていた。食事をどうするか、尋ねに来たのだろう。
顔を赤くして、しどろもどろで弁明しているのだが、堀内も浪速も、なんのこっちゃろ? と、首を傾げていたりする。付き合いが長くなってくると、もう、こんなスキンシップぐらいでたじろがない。
「ああ、すまんことですな、溝上さん。・・・・ちょっと働きすぎやさかい連れ出しますわ。」
「そっそういうことなら、ええ、ゆっくりしてきてください。・・・・・・浪速君、さっきはありがとう。どうしても、親族さん方には強く言い出せなくて困ってたんだ。」
「はあ、まあ、よろしいで。俺、そういう悪役をやらんとあかんらしいですから。」
別に恥ずかしがる素振りもなく、システムを落としている浪速と、「いや、まあ、可愛いてしゃーないんですわ。」 と、笑い飛ばしている堀内を眺めて、溝上も作り笑いを浮かべる。
浪速は、あれが、誤解をされるものだと気付いていないし、それよりも、堀内の言った意味のほうを考えている。「事実でなくても事実になる。」 ということは、何か、自分のほうにあるのだろか、と、思い浮かべているのだが、その記憶事体を自分で抹消しているから、とんと思いつかない。