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三題噺シリーズ

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県立入試面接日うp



お題:フクロウ 青ペン 窓


 冬になりまして、辺り一面真っ白になっています。幼い頃から繰り返し見続けていますが、やはりこの風景は美しいです。
 しかし、風景はご飯の足しにはなりません。美しいものを見て、ホウ、と心が安らぐことはあっても、お腹が安らぐことはないのです。しかも、その空腹状態を何日も続けていると、心も安らがぬようになってしまいます。そして私は今、そんな状態になっているのです。
 私の寝床からずいぶん離れたところまで来てしまいました。ここまで来ても、まだご飯は見つかりません。いつもなら眠っているような時間に飛んでみても、ネズミ一匹見つかりません。
 あぁ、そろそろ疲れました。けれど、死にたくはありません。
 もう少し、飛んでいたいのですよ。

       ○

 親も先公も、同級生のやつらも、みんな腐ってしまえ。畜生が。
 受験生である僕はそんな事を思いながら、もくもくと今までやったノートの丸付けをしていた。今は青ペンを握って、ひたすらに間違いをチェックしている。
 今までやったページを振り返ると、そこには青がびっしりと詰まっている。そして、現在進行形で青は増えつづけている。どこを見ても青、青、青。
 そもそも高校に受かるために何でわざわざ試験をするんだ。全部面接と内申で決めればいいじゃないか。そんなに勉強して、将来一体なんの役に立つ。こんなことしてる暇があったら、もっと有意義なことをしたい――――
 ――――それでも。それでもやんなくちゃだめだろうが、しっかりしろ!
 ネガティブな方に考えそうになったけど、慌てて頭の中で打ち消す。今の僕に必要なのは忍耐力とか、そういう精神的なものだ。
 青ペンで書いたところを最初から見直して、それでも分からないところはひたすら書く。塾に行かない僕が十五年間生きてきて、今のところ一番適していると思われる勉強法だった。そうさ、このやり方でもう何年もやってきて、地道にだけど伸びてるんだ。
 分からないんだったら考えろ。ページはいくらでもある、大丈夫、僕ならきっと―――
 バコン、と窓から今まで僕が一生懸命考えていたことを崩す音が聞こえた。

       ○
 
 ふらふらと飛んでいた私ですが、風が急に強くなってきました。
 いけない、町のほうへ来てしまったか。
 母や父からは、町のほうは慣れないととても危ない所だと聞きました。私のような若造に、そんなところに行く勇気はありません。
 絶対に行ってはいけないよ、もし行きそうになったら、すぐに逃げるんだよ。
 母が怖い顔をして言ったのをまざまざと思い出すと、とても恐ろしくなりました。
 逃げなきゃ、逃げなきゃ、あぁ、でも風が強い、引っ張られる!
 あそこにちかちかしたものが見える、あれは何?嫌だ、怖い、でも風が、いやぁぁぁぁ!
 私は、暗い闇の中でやけに明るく光る壁に激突し、そのまま意識を失いました。

       ○
 
「・・・・・・なんだこいつ」
 驚いて窓を開けると、ふくろうがいた。くるくるとよく回る首がこてん、と力無く倒れていた。血は出ていなさそうだった。暗い中でもよく分かる、きれいな茶色の毛だった。
「生きてる、のかな・・・」
 このまま放っておくのもあれなので、とりあえず部屋の中へそうっと持ち込んだ。ふくろうって案外小さいんだな、と思った。
「・・・・・・・・」
 僕一人の手では負えそうに無いので、とりあえず誰か呼んでくることにした。看護婦の母さんがいるから、多分何とかなる。


 看護婦ではどうにもならなかったので、僕が面倒を見てやることにした。僕と母さんと父さんと弟がいるときに、ふくろうもパッチリ目を覚ましたので、安心した。
 家の中にあった、消費期限が切れかけの魚を目前に置いてやると、ぐったりしていたのが嘘のように反応したので、外に連れ出してから食べさせることにした。
 外に出ると、ふくろうは魚をすごい勢いで食べだした。
「よく食うな―・・・」
 食べる、というより丸呑みする勢いに感心しているうちに、魚は全部無くなった。
 そして、くるりとこちらを一度見ると、あっという間に飛び去っていった。
 そういえば、ふくろうって知恵の神様だったよな。なら、願掛けするのは今じゃないか?
「高校受かりますようにーーーーーーっっ!!」

       ○

 町も案外悪くないものですね。久々のご飯、とても美味しかったです。
 魚をくれて少年は何か言っていましたが、はてさてあれは一体なんなのでしょうか。
 どうあれ、私はその日、満腹の幸せな気分のまま、ふかふかの我が寝床へともぐりこんだのでした。

       ○

 さて、願掛けもやったし続きしよう!と意気込んだ少年が、それまで考えていたことをすべて忘れてしまい頭を抱えることになったのは、また別の話。


作品名:三題噺シリーズ 作家名:ツイスター