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かいごさぶらい
かいごさぶらい
novelistID. 16488
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GHQと撃剣(後編)

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「ツゥエー!イヤーッー!」地響きするような気合いが奔った。渡辺上等兵は、いったん腰を沈み込ませ、上半身をうねるようにしてヒネリあげ、頭上で刀を大きく旋回、そのまま真っ向から鉄カブトを斬り下げた。一瞬台が踊った。刀身は下の台にまで喰い込んでいたのだ。鉄カブトは上部に少し凹みをみせ、両断されていた。



「ウオッー!」囲いが、異様な声をあげる。



「う~ん、俺には無理だな、土壇払いか、、、」下妻は唸った。径5㎝、長さ1メートル位の青竹を横向けにして、10本くらい積み上げ、真っ直ぐに斬り下げる技である。渡辺上等兵は、片足で台を踏みつけ、喰い込んだ刀身を抜いた。鞘に納めて脱刀、深々と礼をし、両断したカブトを地面に置き、その前に座した。ラルコがMPを引き連れ、刀を取り上げた。MPが上等兵を無言で促し、そのまま、連れさった。囲いに向かって、ラルコが大声で叫んだ。(ゲームは、終わった。持ち場に帰れ!)と言っているのだ。



「シモッ!お前もだ」ラルコが、下妻に機銃を突きつけ乍、首を横に振った。翌日の昼、赤羽の近くにあるMPの営舎から、下妻秀次郎少尉と渡辺源一郎上等兵出てきた。玄関前に、数台の軍用車両が並んでいた。



「シモッー、こっちだー!」ジープに乗った、ラルコ軍曹が大きく手を振っていた。隣には、渡辺庄一が笑顔で座っているのも見えた。



「渡辺さん、ご迷惑かけましたね」乗り込んだ下妻が、頭を下げた。



「とんでもありませんよ、私は何も。源一郎から預かった手帳をクリーフ中尉さんに渡しただけですから」顔の前で手を振りながら。あの人囲いの最前列で、眼を光らせていた米兵達はラルコ軍曹の部下だ。



「シモッ、いい部下をもったな~」口をほころばせて、ラルコがジープを走らせる。



「ラルコさん、あんたもな。で、賭けには勝ったのか?」



「サーッ、少尉殿っ!」ラルコが少しおどけて、ゆっくり敬礼した。翌年、赤羽に集積されていた刀剣類、約6千口余りが、日本に返還された。この刀剣類は、後世に「赤羽刀」と称され、半世紀を経て、一般に公開されることになる。