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【腐向け】 創世記の贖罪 【C79新刊サンプル】

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「ごらんになっていて下さい」
 父親は、自分の衣服を脱いだ。その中心に猛々しくあるものを指し示す。皙い人を床に抑え付け、その長い足を、頭のあたりの床に押しつけた。折り曲げられ、さらされたその躰の中心に己を串刺す。
「ァッ……ガッ…………」
 ドロリ、と。接合点から血が溢れた。それは父親が動くたびにしぶき、その皙い肌を紅に染める。
「イきますよ、良く見て居て下さい」
 父親がそう言って男根を引き抜いた。その瞬間。その先端から白濁が皙い躰に迸り……
「ギャアアアアアァァァァァァッッッ!」
 白濁が付いた肌がボコン、と沈んだ。じゅくじゅくじゅく、と。その周囲が焼けただれ、血を溢れさせて溶けていく。腹は内臓が蠢いている様を見せ、胸は肋骨が白く覗いた。
「ひぐっ……うっ……キモチ……イイ……」
 ビクンビクンッ、と皙い躰が跳ねる。それでも、そのくちびるからはその言葉が洩れる。
「キモチ……イイ………ぐっ……ぁ…………」
 気持ちいい筈などあり得ないのに。その顔は苦渋に塗れているのに。
 ジンは、判った。
 父親が言っていた、この皙い人がたった一つ喋れる言葉。
 誰かが、教え込んだのだろう。苦痛を感じた時にそう言うように。
 明らかに、客の顔色が違う。
 悲鳴を上げても、客は喜ぶだろうけれど。『気持ちイい』と言われれば、自分のしていることの罪悪感は無くなるのだ。
「体液の中でも、精液が、一番、傷の治りが遅いようです」
 ボコンボコン、と。肉が傷をなおそうとしているのだ。その先で、精液が白くたゆたっていて、どんどんと回りの肉を溶かしていく。父親が皙い人の躰を抱き上げた。背中を見せる。しばらくするとそこがじゅくじゅくと泡立ち始め……ボコッ、と穴が開いた。どろり、と。真っ赤な血と、精液がしたたる。そうして初めて、その躰の傷は急速に治って行った。
 全部の傷が治ると、少しだけ、皙い人は天を仰いで息を吐く。
その喉が白くて……ぞくり、とした。
「金貨一枚で、この魔物を抱いてみませんか? 締まり具合も、よろしいですよ?」
 父親が、言った。その場にいた全員が財布を取り出す。
「キモチ……イイ……」
 貫かれて。血をしたたらせて。躰を穴だらけにして……それでも、その皙い人は、言った。悲鳴のように言った。ぼろぼろと、青ざめた顔で涙を流して。舌をかみ切りそうな程、歯を食いしばって。
 苦しんでいるのに。
 悲鳴を上げているのに。
 たしかに、その皙い人は、美しかった。
 けれど、それは…………
 それはしてはいけないことだろうっ! 
 ジンは猿ぐつわの下で叫んだ。
 苦しんでるの判るじゃないっ! 
 痛いに決まってるじゃないっ! 
 あんなに肉が溶けて……骨が見えるぐらいなんて、どれだけ痛いか想像もつかないのに。
 自分がされたら、死にたいって思うぐらいの激痛の筈なのに。
 どうしてできるの?
 どうして、この人にならできるの?
 お金を払ってまで。そんなに、笑いながら。
 非道いよ。
 みんなひどいっ! 
 ジンはただ、涙する。
 ガチャンガチャン、と。入り口から見世の男が剣を持ってきた。短剣、長剣。斧。棘の生えた、先がいくつにも別れた鞭。
 そんなもので何を……
 判っているのに。放心状態のジンはまさかそこまでは、と思った。
 その、目の前で、皙い人は両手を枷に繋がれ、宙に吊り上げられた。ガラガラガラ、と忌まわしい滑車の音が響きわたる。父親が長剣を持ち、振りかぶった。
 ザシュッ……! 
 それは狙い違わず、その皙い人の左肩から右脇腹まで引き裂いて……
「ギャァアアアアッッッ!」
 ゴボッ、と血を吐いて皙い人が叫んだ。ガチャガチャガチャ、と鎖を鳴らして激痛に暴れる。一瞬、見物客も口をぽかんと開けていたけれど。
 ボロボロッ、と。紅い瞳から涙を溢れさせた。
 それでも、その皙い人は言った。
 その紅いくちびるで……言った。
「キモチ……イイ……」
 と。
 客の顔に昏い光が灯る。
 ボコボコッ、と肉が盛り上がって傷が治っていく様を見て、客の顔が狂気を含んだものに変わった。それを見て、父親が剣を彼らの前に置いて、告げる。
「金貨二枚で、お貸ししますよ」
 それが……合図…………だった。
 客達はそれぞれに刃物を手にしてその皙い人を引き裂いた。
 血飛沫きが、ジンの視界を真っ赤に染める。
 ジンの涙と、客の高笑いは、同時、だった。
 皙い肌は切り刻まれた。
 キモチイイ。
 その、言葉と共に。