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【腐向け】 創世記の贖罪 【C79新刊サンプル】

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 夜。
 父親の約束通り、ジンは一番奥のテントに入り、カーテンの影に身を潜ませていた。
 ぞろぞろと入ってくる男達。それはみんな町の有力者ばかりだった。つまりは金持ちということ。
 銀貨一枚で一ヵ月分のパンが買える。このテントに入るには金貨が三枚。それでも毎晩誰かが来る。同じ町ではすでに常連客が毎晩、大枚を叩いて入ってくるのだ。
 ジンはどきどきと待っていた。声なんか上げない、と言っているのに。父親はジンにきつく布巾で猿ぐつわをかけ、手も後ろでくくられたまま。どうしてここまでするのかと、ジンは不愉快だった。
「おお……」
 テントの奥から父親が椅子を持って出てきた。そこにはあの皙い人が座っている。
「おお……皙い……」
 真紅のビロードの天幕の中。蝋燭の灯かりで浮かび上がる皙い肌は神秘的で、その場にいた誰もの度肝を抜いた。前に見ていた筈のジンでさえ、薄く発光しているかのような彼に目を見開く。
 否、実際に、発光していた。蛍の光のようにふわり、と光っているのだ。
 まったく……まぶしくもない光で。
「これは我が小屋に昔から受け継がれてきた魔物です。耳もほとんど聞こえず、目も見えず、口もきけず。男か女かも判りません」
 定型の語りを入れながら、父親はゆっくりと彼に着せていたローブを取り去った。
 白く長い首。まだ少年というか、少女というか。これから延びるのだろう、と思える少し短い手足。それでも、そこにいる男達よりは余程足も長い。
 うっすらと、まっ平らではない、というだけの胸。細いけれど、括れてはいない腰。そのまま細い下半身。胸は少女の陰りを見せるけれど。下半身は少年のそれ。けれど、中心に男であることを証明するものはない。
「見えますか?」
 父親が彼の皙い右足を持ち上げた。椅子の上で、最奥を晒されて、皙い人が身を捩る。何か苦し気に眉を寄せた。男達がくいいるようにその奥の陰りを見つめる。そこに女性のそれはない。
「面白いなぁ……男か女か?」
「さぁ……触ってごらんになりますか?」
「えっ? いいのか?」
「これの不思議は、ご自分の手で触れてみないことには…………判りませんよ……どうぞ。噛みついたりは致しません。大変おとなしい魔物です」
 客の中の誰かが名指しされて立ち上がる。恐る恐る、その皙い肌に指を延ばした。緊張に脂汗をかいている。
「おぉ……すべすべしとる…………お?」
 汗の滲む掌で触れた……時。男は自分の掌に異様な感触を抱いた。
「なんだこれは? こんな所に火傷? なかったぞ?」
 男の掌の下から、明らかに火傷のような引きつれが現れる。けれど、それを不思議に思う間もなく、それは客の見ている前でするり、と治ってしまった。元の皙い肌が何事もなかったかのように息づいている。
「人の……体液で…………爛れるようでございます。これ、このように……」
 そう言いながら、父親はその皙い指先を口に含んだ。客に見えるように唾液をからませた舌を這わせる。皙い肌が跳ねた。父親の舌の先。火鉢でも押しつけられたかのようにざらり、と皙い肌が泡立ち、ブツブツ、と表皮が爛れ落ちた。皮膚の下の肉色が現れる。どろり、とその皙い肌に血がしたたった。
「ぁ……ぅっ…」
 皙い顔が苦渋に歪む。口が聞けない、と言っていたけれど。声は出るようだった。それはほんの一瞬。またもや、するり、とその火傷のような爛れは治ってしまう。おおーっ、と見ていた男達の口から声が上がった。
 ジンは悲鳴を上げそうになってやっと、父親が自分に猿ぐつわをかけていった意味が判った。手足を拘束していった意味が判った。
 今、駆けだしていって、その皙い人を連れて逃げだしたい。そう、思っている自分に気付く。
 父親が指先を切って血を溢れさせた。それを皙い魔物の胸から腹にまき散らす。皙い肌がビクビクッ、と跳ね上がった。血が落ちた肌はボコッ、と穴が開き、その周囲がじゅくじゅくと焼けただれる。それでも、それはするり、と内側から肉が盛り上がって、すぐに治ってしまった。皙い肌は、その激痛に、なのだろう。ビクンビクンッ、と、痙攣を起こしている。



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