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お題・正月
「で、帰ってくるの?」
さっきから京子はもう3回もこう聞いている。
帰ってくるの、とはつまり来年も正月に実家に帰ってくるのか、という意味だ。
僕は多分ね、と3度めの答えを口にする。
「それよりそろそろ中に入らないかい?」
もう30分も前からまだ地面に雪の残る玄関前につっ立っているのだ。
僕は鼻が冷えてきた。
「嫌よ、叔父さんも父さんもうるさいし。」
確かに京子の父と僕の父は酒飲みだ。
酒飲みに絡まれるほどめんどくさいものはない。
…いや、僕にしてみれば今の京子も十分にめんどくさい相手だった。
昔からそうだ。
「で、帰ってくるの?」
僕は少し
「多分」
彼女が苦手だ。
「帰ってくるのね?」
「絶対よ?」
「…わかった、絶対帰ってくるから。」
あぁ、耳も冷えてきた。