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お題・狼
浴室に入るとそこには狼がいた。
色っぽい意味の狼ではない。
正真正銘の茶色い狼が風呂につかっていたのだ。
狼は上目使いでちらと私を見た。
「凍えちまうよ、早く入んな」
そういえば私はすっ裸だったのだ。
言われた途端に体がぶるると寒くなる。
「ほら、さっさとおいで。」
でも私食べられちゃったりしないかしら?
綺麗に体を洗い終えたところでパクリ、なんて。
「なにつっ立ってるんだい。お前みたいに不味そうなやつ食べないよ。」
私はそれを聞くと少しムッとしてぼちゃんと風呂につかった。
そして狼を睨みつけると狼は笑った。
「じゃあアンタは不細工な狼の毛皮ほしいかい?」
「そもそも毛皮いらないもの。」
それもそうだ、と狼はまた笑った。
それから二人で、近頃の住みにくい社会だとか困った隣人だとかについて遅くまで語りあったのだった。