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ヒューマノイド

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人里から離れて離れて離れた、夏場は虫除けスプレー必須な森を抜けた所にある、割と大きな研究所。いつから在るのかはわからないが、そこに存在するデータの量を見る限り、あまり最近ではないだろうと思われる。研究所というのだから、勿論研究をしている。現に今、目の前にはその結晶が横たわっている。様々な技術が発達した今でも珍しいヒューマノイド。人の形をしているだけでは既に世にあるものとあまり変わらないが、これには研究所のメモリに長年打ち込み続けた、多過ぎると言ってもいいほどのデータと繋がっている。それによって、出来事の記憶は勿論のこと、そこから自分で学ぶことも出来るし、人間の心に限りなく近いものも持っている。ただ、やはり多過ぎる量のデータは本体にも負荷を与えるらしく、その寿命は酷く短い。
 この研究所に来てからもうそれなりに時は経ったが、未だによくわからないことだらけであった。いつから在るのかも、この膨大な資金の源はどこなのかもわからなければ、創立者の研究理由もわからない。そして、そのいずれも創立者の亡くなった今ではもう、どう足掻いてもわからないことになってしまった。まぁ、それらは創立者に訊かなかった自分のせいでもあるが。
 現在、この研究所に通っているのは自分一人のみである。他の研究員達は皆、別の所へ行ったか、年金暮らしをしているか、もしくは既に亡くなっている。研究自体はもうすぐ終わるようだし、親類のいなかった創立者から研究に必要な物や資金は相続したので、一人でもあまり困らないけれども。
「……ファーザー?」
作品名:ヒューマノイド 作家名:菅野