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ソラノコトノハ~Hello World~

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 家の近くにある白い草が生い茂った草原へ。幼い頃に家族と一緒に出かけて遊んだ思い出の地へ。
 ルゥラは気力を振り絞り、寝台から起き上がった。そして、一歩ずつ一歩ずつ休みながら歩き、家を出た。
 久しぶりの外の景色は世界の終わりを現していた。
 目をそむけることが不要になるほど、そこら中には生き物たちの亡骸があちらこちらに横たわり、辺りからは何も音がしない。それがより不気味さを増していた。
 しかし、ルーラは進んだ。聞こえてくるキョロスケやコトハの声を支えにして。
 緩やかな坂が、まるで垂直な崖を上っているようだった。心臓の心拍が激しく打ち、息をするのも吐くのも苦しかった。
 それでも歩むことは止めず、ゆっくりでも確実に進んだ。
 途中で、コトハの声が聞こえなくなり、その事についてキョロスケに訊ねても返答は遅かった。
「きっと……悲しんで、るのかな……コトハ……」
 自分の体調のことより、コトハを心配していた。
 そして、目的の場所へ辿り着くと、そこは白い草原が広がっていた。
 ここだけは、あの頃と何も変わらない。
「あれは……」
 幼い自分の幻が草原を駆けていく。
 一ヶ月前の自分も、あの様に駆けていられたのに……。
 ルゥラは地に腰を落とした。もう一歩も歩けない。空を眺めると、大地と同じように白い空が広がっていた。
 東の空に一つめの太陽が沈み、西の空にもう一つの太陽が昇ろうとしていた。
 そんな中、コトハがいなくなったという事を聞いた。
 コトハの行動は理解できた。もし自分がコトハだったら、同じ行動をしたと思うからだ。だけど、自分には未来が無い。この残された時間にもう一度、コトハと話しをして別れをしたかった。もうコトハは独りじゃないと気付かせてあげたかった。
 声が聞こえる内に、伝えられる内に。それまで自分の命が続くように。強く願い……祈る。
 そして、その願いは叶えられた。
 コトハ達との最後の別れを済ました。その後は、普段と同じように話した。
 キョロスケたちは星空を眺めながら話しているという。しかし夜が訪れないアフィスでは星を見ることができないので、ぴんと来なかったが……。
 やがてルゥラの意識が遠のいていき、そっと目蓋を閉じた。微かだが、まだキョロスケの声が聞こえる。
 自分の命が尽きようとしても、不思議と寂しくも恐くも感じなかった。誰かに声をかけて貰えるだけで恐怖心が和らいでいるのだ。
 父や母を看取っていた時、ルゥラは最後まで呼びかけていた。きっと母たちも、安らかに眠りについてくれたのだろうか。
 そう思うと、ルゥラは安心した。
 するとアフィスに初めての夜が訪れた。暗闇の中に幾つものの光が瞬く。
 それは美しく、ルゥラが初めて見る光景だった。
 これが、キョロスケたちが言っていた夜空に輝く星なのだろうと感慨深かった。
「そうだ……最後、くらい、名前を呼んであげよう……えっと…キョロスケの名前は……たしか……」
 最後の一言を呟く前に、ルゥラは最後の眠りについた。