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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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クリスマス・ベルを鳴らすのは...

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食べ終わったときに、料理の皿を下げるのだけ手伝って、デザートの準備は「大丈夫だから先に戻ってて」と席に帰される。

もう一度、お待たせと言いながら戻ってきた店長が持ってたのは店で出してたカップル用のケーキ。
2ピースを合わせると、「Merry Christmas」の文字が出来上がる。

「ごめんね、コレしかなくて」
「いや、全然大丈夫ですっ!!」

1ピースずつ、店長と分けて、皿に取る。

「んー、美味い!」

甘さがふわっと口の中に広がって、最高に美味しい。

「バイト入ってよかった?」
「はい、こんな特典あるなら、喜んで来年も入ります!」

俺の言葉に店長は軽く微笑むと、一口お酒を飲んでから言った。

「じゃあ来年のクリスマスも、俺は湯浦くんと一緒に過ごせるのかな」

特別な意味なんてない言葉ととらえれば、そうできた言葉。
それでも、微笑みながらそう言われた俺は、どうしても特別な意味があることを願ってしまって・・・。

「店長、これから俺が何を言ってもバイト、クビにしないでくれますか?」
「ん?もちろん、湯浦くんクビにするなんて、何があってもないよ」

クリスマスの雰囲気に乗じて、言ってしまおう。
おしゃれな店内で、2人きりでケーキを食べて、お酒を飲みながらなんて、チャンス以外のなにものでもない。

「俺、店長のことが好きです」

一世一代の告白。
沈黙が場を包む。
顔をあげる勇気がなくて下を向いてしまった俺には、目の前の相手がどんな顔をしてるのかなんてわからない。

「・・・すみません」
あまりに長い沈黙に耐えられなくなって、そう言ってしまった。

「どうして謝るの?」
いつもどおりの店長のやわらかい声。
顔を上げると、いつもどおりに店長が微笑んでる。

「・・・やっぱ迷惑だったかな、とか・・・思って・・・」
「迷惑なんかじゃないよ、ちょっと驚いただけ」

その言葉は、振られる言葉の前ふりだと思って聞いた。
でも、続いたのは全然予想と違う言葉。

「実はね、あまってるケーキこれだけじゃないんだよ」
「え?」
「もっと普通のケーキもいくつかあるんだ。それでもね、俺はこのケーキを湯浦君と一緒に食べたかったから。従業員の子に手を出しちゃいけないかなって思ってたけど、今日はクリスマスだからこれくらいは自分に許したんだ」
「それって・・・」

「俺も、今日を湯浦君と一緒に過ごせて、すごく嬉しい」

俺も、すごく、すごく嬉しいですって言葉は口からは出ていかなくて・・・それでも店長には十分伝わってたと思う。


遠くで、サンタの鳴らす鈴の音が聞こえた気がしたクリスマスの夜。
俺は確かに、最高のクリスマスプレゼントを受け取った。


Fin

メリークリスマス!