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双子座の流星

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 明るく、暖かい光の中で、声が聞こえた。よく知っている声だ。
「朝よ、もう起きなさい」
 彼の母親は少年に呼びかけ、また居間に戻っていった。彼はしばらくぼうっとしたまま、布団の上で窓を眺めていた。雲一つない青空、まっさらな快晴だ。
 起き上がって居間に行くと、窓の側に上着を見つけた。少年は上着のポケットからデジカメを取り出し、電源を入れた。
「昨日は残念だったわね」
 それを見て、母親が言った。少年はぼんやりと思い出した。そう言えば、結局空は曇っていて、流れ星はおろか、月すら見えなかったのだったか。その証拠に、カメラには何も残っていない。
 キッチンの方から良い匂いがした。少年は不思議に思った。朝から、何を料理しているんだろう。いつもはトーストとサラダだけなのに。
 洗面所で着替えてから居間に向かうと、食卓にはいつもより豪華な朝食が並べられていた。トーストの他においしそうな匂いのするコーンスープと、卵焼き、サラダにはローストビーフが載せられている。そして、食卓の空いている場所に、一枚の写真立てが置いてあった。いつもは棚の上に置いてある、妹の写真だ。そこで少年は、今日が何の日なのかを思い出した。
「二人とも、誕生日おめでとう」
 少年の母親が微笑んだ。

 彼に好きなだけ食べて良いわよと言い、母親は料理を頬張る息子を嬉しそうな目で見ていた。
 食べ終えてから、母と少年は食卓を挟んで座っていた。少年はカメラをいじっている。その隣に、彼の妹の写真があった。
「見せてあげる写真は決まった?」
 母親は穏やかに尋ねた。少年は顔を上げ、隣の写真を見つめた。今の自分よりも遙かに年下、まだ言葉も話せないほどの幼い妹が、笑顔でこちらを向いている。
「もう、見せたような気がする」
 彼は言った。その答えに、母親は驚いた。
「いつ?」
「わかんない、けど、渡してあげたと思う。嬉しそうだった」
 静かに言う彼も、少し嬉しそうに笑っていた。だがその少年の目尻のあたりがほんの少しだけ濡れているのを、母親は見つけた。そして彼女は、息子の側に寄って、彼をそっと抱きしめてやった。
 少年は、母親の暖かい体温を感じた。


作品名:双子座の流星 作家名:漆烏