コミュニティ・短編家
お題・ソファー
私の26番目の恋人の話聞きたい?
いいわよ、フフ。教えてあげる。
26番目の恋人はね、とってもかっこよかったわ。17番目の恋人の次くらいにね。そうよ、アルコール依存症だったやつの次。
髪がさらりとしててね。色白で…今時の女の子が大好きなタイプよ。特に文学少女とかにモッテモテだったわ。
真面目な男でね。そういう真面目な男に限って私みたいなどうしようもない女にひっかかっちゃうのよね。傷付くのは目に見えてんのに。
そいつはねぇ…とってもいい男だったのよ?
でもねぇ…コレクターだったのよ。
なんだと思う?
きっと当てらんないわよ。
ロボット?…違う違う。
ソファーよソファー!
世界中のありとあらゆるソファー集めちゃってさ。
そのくせ座りもせず笑いもせず腕くんでただじーっとそれ見てんのよ。
私、馬鹿ねぇなんて笑って見てたんだけどさ、そうするとそいつ、男なんて皆そんなもんだよって顔歪めんのよ。
あったりまえよ。
やんなっちゃうわよ。
浮気?するわけないじゃない。
あんた私の話何回聞いてるのよ。
私は恋多き乙女なだけでちゃんとひとつひとつ大真面目だったわけ。
そう。そういうことよ。
わかった?
…話戻るけどね、まぁ最初は大目に見てたのよ。
殺人マニアとかになるよりはよっぽどいいじゃない?
ところがよ。
とうとうそいつ貼り紙はりだしたのよ。
ソファー募集中って街中に。
どんなに汚くても引き取りますって。
来るわ、来るわでソファーの海よ。
それも案の定汚い古いのばっかり。
そりゃタダだもの。
粗大ごみ出したい連中しか来ないわよ。
私もうその時には怖くなっちゃってね。
こいつ誰だろうって。
こんなやつ知らないって。
こんな男愛した覚えないって。
…それで集めたソファーどうしたと思う?
まずは山買ったのよ。
それから集めたソファー全部並べたの。山にね。あの男。
私何でだか無償に腹たって腹たって山に火つけてやったわ。
そしたらね、あの男やっと大笑いしたのよ。
燃えてる山とソファー見ながら。
それから自分も突っ込んでったわ。山に。
地獄変みたいって私ぼんやり考えてたの。
…ね、信じる?この話。
作品名:コミュニティ・短編家 作家名:川口暁