Search Me! ~Early days~
「「ちょおっと待ったあああ!!」」
「ほえ?」
「……っ」
見事に重なった聞き慣れた声に振り返ると、…何と言うか。
「さっきから聞いてりゃあああ京介え!!てめえどういうことだああああ!!」
「鈍感むっつりー!!」
何故そこまで言われなければならないんだしかもこの2人に。
と、思った時、あの温度と柔らかさが消え
「っ楢川さん羽野さん!!」
「え、どわあ!?」
「わー。」
―がばっぎゅうっ
「…っ!?」
京介の目の前で時生と秀平の両方に跳びついた。先程京介に向けたものとよく似たあの笑顔で。
「んまままっ祭!?おいちょっ、待ちなさいっ心の準備が!?」
「楢川さん楢川さん!ありがとうございます!俺、おれね!!」
「祭くん俺もー俺もー。」
「羽野さーん!ありがとおー!!」
「いえいえー、君の笑顔のためだしー。」
「ちょっ!?秀平っ俺まだちょっとしか!」
「下心野郎は下がってろ。」
「2人ともありがとっスー!うれしい!!」
全身で喜びを表して惜しみない言葉を叫ぶ。京介にしたことと同じように時生と秀平にも。
「…………」
妙な気分どころの話ではない。
“にゃあー!!”
“なぁーん!”
「あ!うわーよかったなあぁ!お、お前らー!!」
―ぱっ
「「あ…」」
「ぜったい、いい名前つけてやるぞお!えーっと、ええと…なんかな、何がいいかな!?」
次の瞬間、呆気なく2人から離れ猫に向かうと抱き上げてクルクル回っている。
…急に安堵が広がるがそれでも残るこの喪失感と苛立ちは何だ。
「うーん、うーん……、あ!ねーねー筧さん筧さん!名前!名前何にしよ!?」
「っ……、お…前が決めてくれ。」
「えー!?一緒に考えましょうよぉ!」
「祭!俺!俺も考えるって!」
「一番センスないクセに何を馬鹿言ってんだかー。」
「ねーねー駄目っスかー?」
くるっと振り返ってころころ変わる表情を向けられてしまうと、先程感じていたあの嫌な感じはすぐに消えてしまった。
「…何のためにお前に依頼したと思ってる。」
「え?センスないからっしょ?」
「わかってるなら、」
「ん…でも俺だって、んな褒められたもんじゃナイっすよ、いっつもー……、て、あ!?忘れてた!!」
「…?」
ハッとして叫ぶと子猫を降ろし、ピシッと背筋を伸ばすと3人に向き合う。
「どしたあ祭?」
「何をー忘れてたのー?」
「あの、えと、俺!言ってなかったことあんです!それで今日来たんです!!」
「…ああ、」
そういえば祭自身も用事があると言っていたことを思い出す。
「何なにー?どーしたのー?」
「はいっ、実は俺…」
「っ!まさか告はっ」
「「それはない。」」
「ぐあっ!?」
「…う?」
「……いい、気にするな。」
「続けてー続けてー。」
空気を読まない時生は黙らせ先を促す。祭は少し緊張した表情で居ずまいを正すと、言葉を続けた。
「は、ハイ!……実は俺…」
「…」
「…っ年齢、サバよんでました!!」
「ええ!?つうことはお前未成年…」
「違いますぅ逆っす!!」
「逆?」
「ハイっ!」
ビシッと、片手を上げ額の横に指先を揃える。
所謂“敬礼”だ。
「警視庁長宮署、捜査課機動3係所属!伊奈葉 祭…っ巡査長、25歳であります!!」」
最高の笑顔で最高の衝撃を叩きこんだ。
……これが、ハジマリ。
No smoke without fire.
作品名:Search Me! ~Early days~ 作家名:jing