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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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シャドービハインド

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「よく映画でこんなシーンが描かれているだろう。ヴァンパイアに噛まれた者はその下僕となる。しかし、キャットピープルはそうではない。無理やりキャットピープルにされた人間がどのような行動を取るか想像も付かない。その者が俺たちの仲間になることを拒否し、すべてを人間の前で明るみにしたらどうなるか、俺たちは怪物扱いされ、一部の過激派の闘いが火種となって、人間と全面戦争になることは目に見えている。統制が取れないのにキャットピープルを増やすことは、自らの首を絞めることになる」
 キャットピープルが世界征服をすること、または考えなしに仲間を増やそうとする行為、それはキャットピープルによって阻止されてきた。事件はすべて闇に葬られる。
 長く生き、自分たちの身を守ろうと画策すると、当然のように権力を手に入れようとキャットピープルはする。実際、キャットピープルは各界に顔が利く。だが、あくまで裏でのみだ。
 たとえばキャットピープルが大統領になり、それが世間に明るみなった場合、それでも大統領は権力を保持できるか?
 無理だろう。
 数は最大の武器である。人間に比べたらキャットピープルなど絶滅危惧種だ。権力はそれに従う者があって効力が発揮されるものだ。
 キャットピープルが人間の世界に明るみになってはいけない。これは絶対的な掟だった。
 リサがなにかを思い出したように軽く手を叩いた。
「そうだ、あの事件は近年ではもっとも危なかったなー。輸血用の血液にキャットピープルの血を混ぜるってやつ。輸血だったら感染率100パーセントだもんね。しかも、〈感染〉したほうが、まったく気づかない間に〈感染〉しちゃうから、気づいたら自分もキャットピープルでしたみたいな」
 気を取り直すようにリサは座りなおした。
「話はちょっと逸れちゃったけど、カオルコの率いる〈シャドームーン〉は政界征服の段階として、クイーンを探していろいろしようとしてるってこと」
 ここまでは確認のための要約だ。リサが話したい本題はこれからだった。それ切り出す前に、戒十からその話題が振られた。
「ところでリサ、〈夜の王〉ってなに者なの?」
 戒十はすぐ近くでその会話を聞いていた。
 あの驚いたリサの表情を思い出す。
 ――彼はもう死んでいるはずじゃ?
「〈夜の王〉は世界征服を目論んだ殺戮者。そして、アタシが殺したハズの男」
 だが、〈夜の王〉は生きていた。
 なにかを思い出すように、リサは天を仰いで話しはじめた。
「アタシが〈夜の王〉、当時は別の名前で呼ばれていたんだけど、そう、はじめて会ったのは12世紀ごろだったかなぁ。当時はまだ正義感に溢れ、より良い社会の実現のため、理想に燃えているような人だった。キャットピープルと人間、どちらのためにもなるような世界を作ろうってね」
「話の途中で悪いが、少しいいか?」
 シンが途中で口を挟んだ。どうしても気になる点があったのだ。
「今まで俺はリサに年齢を尋ねようとしなかった。それはリサが隠しているそぶりをしていたからだ。しかし、今は聞かせてもらう、リサはいつから生きていて、いったい何者なんだ?」
 12世紀ということは、800〜900年前のことだ。キャットピープルの寿命を超えている。
 カオルコもその点を指摘していた。
 必死な延命で生きながらえている〈夜の王〉。それにくらべて、リサは若いまま、永い時を生きている。
「その話はあとでってことで」
 いつものようにリサは答えをはぐらかした。そして、その話を忘れるように、話題を戻して一気に話そうとした。
「とにかく〈夜の王〉は変わってしまったの。はじめて会ったときから100年くらい経ったころかな、彼の噂を聞くようになったのは。〈夜の王〉と呼ばれるようになった彼は積極的に人間を侵略し、仲間を徐々に増やし、ヨーロッパ全土を侵略しようとした。特に教会との戦いは壮絶だったなー。んで、まあ最後はアタシが彼を殺したの。遺体は発見されなかったけど、誰もが絶対に死んだと思ってた。だって、そのあとなんの噂も聞かなかったし。歴史的にも教会が隠蔽して、記録された書物は全部焼き払われたし、そのことを話すこともタブーにされたの。それでも多少は伝承とか伝説の類として残っちゃったけど、その問題は時間が解決してくれて、今じゃ誰も信じないような感じだしね。アタシに言わせてみれば、歴史の教科書なんてウソっばかりだよ、ここだけの話ね」
 ひと段落付け、リサはこう付け加えた。
「死を間近にしたキャットピープルはタチが悪い」
 敵はカオルコだけではない。
 リサのケータイが鳴った。非通知だ。
「もしもーし、リサです」
《決着をつけましょう》
 ケータイから漏れる声、その声は戒十とシンにも届いていた。