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真実の鍵 ―解決編―

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ちょっとした実演


「まず、犯人が私」
右手に持っているカッターナイフを全員に見せるように上にあげた。
「そして俺が比果 道音」
軽く音羽警部は手を上げた。
「まず、犯人が比果 道音さんを刺したと仮定します」
そう言いながらも私は刃が出てくるほうを音羽警部の胸に当てた。
「ここで俺は条件反射でカッターナイフを抜こうとします」
音羽警部は私が離したカッターナイフを持った。
「ここで問題はこの手です」
体の向きを戻すと私と音羽警部は部屋にいる全員を見た。
 音羽警部はカッターナイフを持ったまま、その手を前に差し出した。
「カッターナイフを抜こうとする手はこの通りです」
刃が出てくる方に親指があり、小指は刃が出てこないほうにあった。
 私はその手を指差した。
「しかし実際には違います」
再び私は制服の胸ポケットから二本目のカッターナイフを出した。そして刃が出てくる方に小指、逆に刃が出てこないほうに親指がくる逆手で持った。
「普通、こんな手で刺されたカッターナイフを抜く人はいません。では、何故こんな形で指紋が付いていたか。それは……」
私はその手のままカッターナイフの刃が出てくる方を胸に当てた。
「つまり、完璧な殺人に見せる為にこのような方法に出たんです」
数秒の間を置いて、私は二本のカッターナイフを胸ポケットにしまう。
「だが、そんなことをしなくても電話とかすればいいんじゃあないのか?」
私がカッターナイフを仕舞っているときに出て来た美代さんの問いに私は首を振った。
「この部屋には取り付けの電話がありません。もちろん比果 道音さんは携帯電話を持っていましたがこの現場に無かったとしたら電話は出来ません」
そこで私は言葉を止めると息を吸った。
 あと、少しで終わる。
「犯人がそれをさせないために比果 道音さんの鞄を持ち去っていたんです。だから比果 道音さんは強行手段でカッターナイフを自分の胸にさした」
再び私は言葉を止め、一同を見ると同時に犯人を見た。
 犯人の視線が一度揺らぐ。
「ここで少し問題が出て来ます。
何故、殺害時には鞄は無かったのに被害者の発見時にはあったのか。
何故、自殺に見せる為の薬が入っていた袋を南城さんが見た時にはあったのに鑑識が見た時には無くなっていたのか。
 これの答えは簡単です。誰かが持ち込み、そして誰かが持って逃げただけです」
 私はゆっくりと犯人を指差す。