むべやまかぜを 幕間
少女は当然のようにして憤り、山田はそんな小娘のことをやれやれといった具合に眺めるばかり。そして笑って聞いていた大井弘子がしみじみとした口調で言った。
「……虚業よねえ」
嘲るでもない、侮るでもない。同情するような女主人のつぶやきに、物書きヤクザも菜園男も沈黙している。
「人生を浪費している。そのことに気がつかない。気がついていても……気がつかないふり。楽しいカーニバルはとっくの昔に終わってしまっているのにね」
女主人の言葉に山田は何も言わず、丸山花世は適当に頷いた。
オメガ文庫はそれからしばらくして廃レーベルになった。
作品名:むべやまかぜを 幕間 作家名:黄支亮