叶わぬ恋
リクの舌の裏側に聖の舌が入り込んできて、ゾクゾクと快楽が襲う。
『う、うそっ』
リクは、その感覚に驚いて思わず、聖を押した。
しかし、体制的に相手の方が勝ってしまい、逆に押し倒される。
その時、下半身に硬いモノが当たった。
ぼーとリクは、窓の外を見つめた。
下には、聖の姿。
リクは、ほとんど全裸のまま身体に残る、快楽に酔いしれていた。
上手かった。
手慣れているみたいに。
男娼は、客を気持よくさせなければいけないのに、逆に気持良くさせられてしまった。
リクは、鈍く痛む腰を抱えて立ち上がる。
着物を着て、部屋に帰ろうとしたリクの耳に、聖の笑い声が届いた。
「あなたも相変わらず、お美しい」
どうやら相手は、女娼。
リクは、なぜか凄くムカついた。
恋をした事がないリクは、何でこうなったか分からない。
初恋をしたと知ったのは、それから、二週間後の事だった。
「これは、橘さまっ!!」
相変わらずの店主。
しかし、リクはこの時周りの男がキャーキャー言うのを不思議と思わなくなっていた。
むしろ、分かる!その気持!と口にはしないが心で叫んでいるのである。
ぱちりと初めて会った時みたいに、目が会った。
「リク」
名前を覚えてもらったようだ。
リクはそれを聞いてなぜか、頬を無意識に染める。
今日も、聖に氏名を受けた。
あの、女娼と親しげに喋っていたのを、怒る気持はない。
リクは、自らの中に芽生えた感情に漸く気付いた。
「ねぇ、斉。男娼と普通の人って恋が出来るの?」
「無理だな」
お昼の休憩時間に、リクはおにぎりを頬張っていた。
斉の答えにいささか肩を下ろす。「何で?」
会話が詰まったので仕方なく聞いた。
「俺たちは身体が売りモンだからな。ソイツ一人のモンにはなれねぇ、だからだ」
ふうんと曖昧な返事を返す。
なんだか複雑だった。
そして、聖がリクの所に通いだして、リクはある突飛な行動に出た。
「あ、あの、聖っ!」
半分脱げかけの衣服をそのままにして、リクは聖の肩を掴む。
「お、俺。あんたが好きだっ・・・」
思い切って、告白したのだ。
しかし、聖は何も言わなかった。
まるで世界が音を無くしたように静かになる。
リクは、ドキドキと目をつぶり返事を待った。
しかし、
「あっ・・・ちょ、待って・・・んぅっ」
聖に誤魔化されるように、抱かれてしまった。