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タクシーの運転手 第四回

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「すごいなぁ、パパにもそんなこと言われたことないよ」
「僕が少し変わっているだけかもしれないですが」
 ははっ彼は笑った。
「確かに。おじさんちょっと変だもん。普通こんなことしないよ」
「普通がどうとかはあまり気になりません。ただ自分の気持ちに自然と従うだけです」
 彼は席に深く腰をかけてそう言った。
「さらっとそう言えるのがまたすごいわ」
 彼女は目を輝かして言った。
「おじさん、名前は?」
「名乗るほどの者ではないですよ」
「いいじゃん、別に。うちはユイっていうの」
「ユイさん、ですか。かわいらしい名前だ」
「おじさんは~?」
 ねだるように彼女は言った。
「しょうがないですね。僕は職場では、タカさんと呼ばれてます」
「タカさん?本当に?」
「さぁどうでしょう」
「嘘なわけないよね。じゃあタカおじさんだ!」
 彼女ははしゃぎながら言った。
「おやおや、こんな時間なのに元気ですね」
「そんなことないよ。てかおじさんこそすごいね。こんな時間まで仕事して」
「慣れればなんてことないですよ。この仕事長いですから」
 この後も2人はいろいろ話した。そのうちに外は明るくなっていた。
「はっ!あれ?うち寝てた?」
「そのようですね。話の途中で、急に静かになったなと思ったら、寝てましたね」
「なんなら起こしてくれればよかったのに!」
「いやいや、これから電車に乗るっていうのに一睡もしないんじゃ危ないですよ」
「電車…。あぁ、え?」
 彼女は外を見た。もう夜は明けて朝になっていた。
「嘘、もう朝?案外早かったな~」
「そうでもないですよ。結構話してましたよ」
「それくらい話に集中してたってことよ」
「それは良かったですね」
 彼は帽子を被った。2人はタクシーを降りた。
「…じゃあ、そろそろ帰るね」
「そうですね。お気をつけてください」
「うん、いろいろとありがとう。バイバイ、タカおじさん!」
 彼女が手を振ったので、彼も手を振り返した。彼は彼女の姿がだんだん小さくなっていくのをずっと見ていた。
「いやー、それにしても今日はいい天気だ」
 そして再び彼の車は走り出す。
 どこまでもどこまでも。