推理の鍵 ―殺人編―
証拠集めは大切だよね
霜月高校 図書室
「これが昨日の結果だ」
「ありがと」
机を挟んで椅子に座っている音羽警部にお礼を言いながらも椅子に座っている私は机の上に置かれた資料を手に持って読み始めた。
内容は以下のような物だった。
○被害者の死因はカッターナイフによる刺殺。争った形跡がないため顔見知りと推測できる。カッターナイフは心臓に一刺しであり、発見時には刺さったままであった。そしてカッターナイフはほぼ垂直に刺さっていた。
○カッターナイフの指紋が比果 道音の逆手の指紋が付いていた。これはカッターナイフを抜こうとして付いたためと思われる。
○死亡推定時間は13時30分から発見時の18時10分だと思われる。
○次に現場の鍵はウォード錠であり、現場にあった物、鍵が保管してある部屋にある二本のみである。複製は至難の技が必要であり、今の技術ではできないとのこと。
○被害者の持ち物。机の上にあった小さな鞄内には手帳、携帯電話、財布。
そこで私は資料を机の上に置いた。
「それで、これが被害者の持ち物だ」
机の上に置かれたのは袋に入っている手帳、携帯電話、財布だった。
通学用鞄から取り出した白い手袋を付けた。
「……携帯電話の履歴は一番最後が黒畑さんか」
袋から足りだした携帯電話を再び袋に戻し、手帳を取り出した。
手帳の中にはぎっしりその日のその日の予定が書いてあったが事件があった日の場所が丸々空いていた。
「この日は何にも予定が無かったのかな」
手帳を机の上に置くと事件があった日付の場所を指差した。
「さぁな……。ん、お前柑橘系の香水つけている?」
「いや、つけてないけど」
「……そうか。勘違いかな」
「歳だね」
私は再びページをめくったがすぐに手帳を閉じると袋に戻して財布を出した。
「……金持ち」
福沢諭吉が二人に夏目漱石が四人、その他小銭が沢山。
被害者が私よりも一つ年下なのが信じられない。財布を元の袋に戻すと白い手袋を外した。
「もういいのか?」
「だいたいは現場で見て知っているから。知りたかったのは死亡推定時刻、被害者の持ち物、それに死因よ。……アリバイの方は?」
資料を軽く指で叩いていた私はその手を止めると音羽警部を見た。
音羽警部は黒いカバーの手帳を出した。
「それも午前に調べて来た。
昨日は日曜日で、あまりアリバイを持っている人はいないがな…。
まず、第一発見者の南城 遥香は部屋で本を読んでいたためアリバイはない。
屋敷の持ち主である美代 大祐は13時から16時まで近くのホテルで会議をしていたらしい。
最後に黒畑 水梨。16時に学校に待ち合わせ後、ショッピングモールなどで遊び、18時に学校の前で別れたそうだ」
「そうなると、みんなアリバイがないってわけ」
黒髪をいじりながらも溜め息混じりの声を出した。しかし音羽警部は手帳の紙を一枚めくった。
「それが……だな、黒畑 水梨、それに黒畑 水梨の友人の話で比果道音に16時29分に携帯に電話があったらしい」
「じゃあ16時29分まで比果 道音に生きていたわけ?」
音羽警部は一度頷いた。
私は机に方肘を置き、頬杖をつくと音羽警部から視線を外した。
「やっぱり犯人南城さんかもね」
「さっそく諦めたか」
「馬鹿言わないで」
そう言いながらも私は立ち上がった。
「南城さんが犯人だろうと違う人が犯人であろうと証拠をそろえないといけないのよ」
そう言いながらも私は通学用鞄に資料を詰めると鞄を持ち、図書室の出入り口に向かって歩き始めた。
作品名:推理の鍵 ―殺人編― 作家名:古月 零沙