推理の鍵 ―殺人編―
久しぶり私の場所
その電話の相手の言葉を聞いた瞬間受話器を置こうかと考えた私が居た。
『先輩、警察に犯人扱いされました』
後輩の涙声が電話を通して聞こえてくる。
「それで、南城さん。ちゃんと説明してくれる?」
椅子に座っている女子の名前は南城 遥香さん。私は南城さんと読んでいる。南城さん泣くのを必死で我慢している顔を私に向けてきた。
「それが、私が第一発見者になっちゃって。しかも死んだのが比果さんで、警察が他殺だって言っていて……」
「……粗方理解したから泣くか、話すかのどちらかにして」
「じゃあ、泣きます」
南城さんはそれだけを言うとすぐに泣き始めた。
その姿を今にも溜め息を吐きそうな私が見ながらも近くにあった椅子に座った。
南城さんの話から推測するに南城さんの屋敷内で殺人があって、しかも警察は第一発見者の南城さんを疑っている。まぁ、普通の考えだと私は思う。
「それで、もう少しすれば今回の事件の担当の警察が来るのね?」
泣きながらもだがちゃんと頷いてくるところが南城さんの偉いところだと思う。
そんなとき、私達がいる部屋の扉が三回叩かれた。
南城さんは泣きながらもだが返事をする。
「どうぞ」
「――失礼します」
扉を開けてきたのは男性のスーツ姿の警察官だった。私が見るに多分独身、四十歳後半。
「あなたが、さっき南城さんが言っていた……」
「夏葉 優歌です」
私は椅子から立ち上がると軽くお辞儀をした。
「どうも。今回この事件の担当になった蓮木です」
警察手帳をだしながらも挨拶をしてきた蓮木さん。階級は警部。蓮木警部と呼ぶことにしよう。
「さっそく不躾な質問なんですが。やっぱり南城さんを疑っているんですか?」
「……えぇ、まあ。ですが容疑者全員を疑っているので南城さんだけとわ……」
完全に目が泳いでいる蓮木警部を見ながらも私にとって困ったことがあった。
それは、南城さんが警察に目を付けられればきっと学校の方が黙っていないと思う。下手すると停学させるかも。
「……あの、ちょっとお願いがあって。出来れば廊下で話したいんですが」
私は少し困ったような表情を蓮木警部に見た。
「……いいですよ。廊下で聞いた方がいいんですね」
こちらを安心させるために蓮木警部の表情は笑顔に変わる。
私も今、作れる笑顔を蓮木警部に見せながらも頷いた。
「はい。廊下でお話します」
蓮木警部が廊下に出るのを見ると私もつられて廊下に出るとすぐに蓮木警部が扉を閉めた。
「それでどうしたのかな?」
まだ笑顔を向けている蓮木警部に向けて、私は静かにするように口の前に人差し指を当てた。すぐに携帯電話を取りだした。
「えっと……」
困っている蓮木警部無視しながらも五年ぶりにある電話番号を押した。
「あっ……お久しぶりです。元気でしたか?」
私は蓮木警部に背中を見せるとそのまま電話に集中した。
「ちょっと、お願いがありまして。屋敷主の名前は美代 大祐。被害者は比果 道音。その件の担当者は蓮木警部って人なんだけども」
五年ぶりに電話をしたけども話がわかる人で助かる。
「えぇ、じゃあ待ってますんで」
そこで私は電話を切り、振り返って蓮木警部を見た。
困っていた蓮木警部はバイブがなっている携帯電話を取りだして話し始めた。少し困っているように見える。
「警視総監! いったい、何の用でしょうか?」
蓮木警部は背筋を伸ばすと電話の相手と話し始めた。
「えっ……。担当変更ですか!」
焦り始めている蓮木警部に私は再び背を見せると長い廊下を歩き始めた。
作品名:推理の鍵 ―殺人編― 作家名:古月 零沙