永遠 そのいち
今日なんて、とんでもないことを言い出したので、絶句した。入籍したほうが、はっきりしていいのではないか、と、言うのだ。
「あんた、正気? 」
「なんで? 同棲して、それでやることやってんねんから、それが正しい流れやろ? 」
「家に帰って、事実を自覚したほうがええんちゃう? 」
「家? 俺の家、ここやろ? 」
「はあ? 」
記憶喪失ではない。ちゃんと仕事はしているらしいし、こちらのことも理解している。ただ、旦那のことだけが抜け落ちているのだ。それはもう、はっきりすっぱりと。
「吉本花月って名前は? 」
「え? 大学の同期やったと思うけどな。」
さすがに、これは演技ではないと背筋が寒くなった。最初の夜に、旦那がいることを告げた水都は、とても嬉しそうに、旦那のことを言っていたからだ。それが、名前を出しても、そんな反応しかしないのはおかしい。もしかして、別れたかったのか、とも、いぶかしんだものの、「家に帰っても寒いから。」 と、二週間限定の約束をした時は寂しそうに笑っていた。何が、どうなったら、こうなるのかわからない。当人が、そう言うのなら、しばらくは、ごっこ遊びのつもりで付き合うか、と、腹を括った。
だが、そうではないことにも、すぐに気付いた。真夜中に、悪戯してやったら、「花月、もっと。」と、嬉しそうに呟いたからだ。
・・・・なぜ?・・・ていうか、どうなってるんよ? これ・・・・
相手は、二週間限定で出張だと言う。ならば、そろそろ戻っているだろう。直接、相手に問い質し、別れ話がこじれているのか、痴話喧嘩なのだとしたら、早々にお引取り願いたい。幸い、自宅の場所は覚えている。今夜にでも出向いてくるか、と、朝の出勤前に、ダイニングテーブルに座っている水都に、「今夜は、会社の宴会やから遅くなる。」 と、告げて出勤した。