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君はサンタクロース

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「サンタは、いるんだよ」隣を歩く翔太は、たしかにそう言った。

今日は12月24日。世間で言うところの、クリスマス・イブというやつだ。
付き合い始めてそろそろ1カ月たつ私と翔太は、もはや習慣のように一緒に学校からの帰り道を歩く。
こうして一緒に帰っていると、いっぱしの恋人同士みたいに見えるんだろうけど、私たちが付き合うようになるまでに切ない片思いの期間があったわけではない。少なくとも、私の方は。
翔太が一方的に告白してきて、その勢いに面喰って頷いた。断るほど誠意があったわけではない。そのうち私に飽きて、勝手に離れていくだろう。惰性に任せるのが、一番面倒がなくていい。そう考えてのことだった。
だから、というわけではないけれど、今日がクリスマスだということに、大して興味がなかった。もともと私の家は「クリスチャンでもないのにクリスマスを祝ってやる義理はない」と考えているから、小さいころから縁がなかったというのが大きいのかもしれないけど。
それを翔太に話すと、それじゃあおれの家で家族皆でクリスマスパーティーをやるからぜひ来てほしいと言われた。
私に告白してきたときと同じ、勢いがあって、そして真摯な目をしていた。
私はなんだかたじろいでしまって、「クリスマスパーティーなんて子どもじゃあるまいし。まさかまだサンタさんなんて信じてるわけ?」と、ずいぶん子供じみた照れ隠しをしてしまった。
翔太の目は、苦手だった。真剣で、まっすぐで、どこまでも一途な目に見つめられると、自分がひどく情けない、嫌なやつだということを思い知らされるような気がしたからだ。
自分の大人げなさに後ろめたくなって翔太の方を向けないでいたときに、翔太は言った。
「サンタは、いるんだよ」
小さくはあったけれど、芯のある、たしかな声だった。

作品名:君はサンタクロース 作家名:やしろ