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風はつめたいけどあたたかい春。

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そして、ベンチに座ってからも大江さんは僕の肩に顔をうずめて泣いていた。
10分ぐらい経っただろうか。大江さんはようやく落ち着きを取り戻し、僕の肩から顔を離してハンカチで涙を拭い始めた。
目元は真っ赤だった。
僕と大江さんは沈黙した。
先ほどまで大江さんが大声で泣いていたので、沈黙がつらい。
「その・・・・・・無粋な事を訊くかもしれないけど、何かあった?」
すると大江さんは僕を見つめながら口を開いた。
「また、肩借りてもいい?」
僕がこくり、と頷くと大江さんは僕の肩に頭を乗せた。
「実言うとね。私、ビアンなの」
突然の告白のように思えたが、サークルの中の風のうわさで聞いたことはあったのでさほど驚かなかった。
しかし、彼女は僕が知らないという前提で話しているだろう。
「そう・・・・・・なんだ」
僕は少し驚いたふうにして返事をした。
彼女は再び口を開く。
「それでね、私サークルの名塚さんと付き合ってたの。名塚さんは知ってるよね」
つまり、名塚さんもビアンだったということか。
僕は再びイエスの返事をする。
「去年の春からの付き合いだったから、ちょうど一年経つか経たないかなのかな・・・・・・。さっき名塚さんに呼び出されて、急に女性との恋愛に冷めちゃったって。彼女、ビアンじゃなくてバイセクシュアルだったんだって」
「つまり名塚さんは男性と恋愛したい、って言ったの?」
「そう・・・・・・。私にはその気持ち、ちょっと分からないけど」
「へぇ・・・・・・そうだったんだ」
僕はありきたりな言葉を発する。
「私ね、やっぱり名塚さんと寄りを戻したいんだ」
横では大江さんが僕の肩に頭を乗せたまま、正面を見つめていた。