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ツイスター
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novelistID. 14121
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その光景

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小さい頃いじめられっこだった、引き篭もりの女は、見た。
 その光景を、見た。
 
 正義感が強く、肉体労働が好きな女は、見た。
 その光景を、見た。

 なかなか思うような絵が描けず、イライラしている男は、見た。
 その光景を、見た。

 学校の先生になるために猛勉強をしている、心根の優しい男は、見た。
 その光景を、見た。

 風邪をひいたせいで、部屋から出してもらえない男は、見た。
 その光景を、見た。

      ○

 こわい。こわい。こわいよう。
 目の前に、にやにや笑っている大きい男の子がいる。その取り巻きの、細いやつと小さいやつも、同じように笑っていた。
 仲良しのフミちゃんと一緒に帰ってて、ついさっきバイバイして、あとちょっとで家に帰れる、と思っていたのに。家に帰ったら、優しいお母さんが待っていてくれるのに。
 最近、学校でともだちだと思っていたクラスの女の子たちが、急に私に意地悪をするようになった。何でだか知らないけど、急に私のようふくとか、言ったこととか、いちいち馬鹿にしてくるようになった。
 ちっちゃい頃からずぅっと一緒にいる仲良しのフミちゃんだけは、私と変わらずに遊んでくれた。でも、女の子たちが馬鹿にしてくると、男の子たちもしだいに私へ意地悪をするようになって、ついには叩いたり蹴ったりしてくるようになった。
 私は、何もしていないのに。
「おまえ、今日、先生に俺たちのことをチクっただろう」
「して、ないよ・・・・・・しらないよ」
「うそつくな!」
「しかたないよ、だって脳みそ足りないんだもん」
「この前、国語のテストで三十点しか取れなかったんだろう?」
「どうせ、昨日の事も覚えてないんだ」
 ばかだもんな、しかたないな、あはははははは・・・
 違うもん、ばかじゃないもん、昨日のことちゃんと覚えてるもん、テストの点が悪くったっていい、ってお父さんが言ってたもん。。。
 言い返したいけど手が震えて、男の子の方もこわくてまともに見れなくって、頭の中がぐるぐるする。自分のくつの先を見て、一所懸命、男の子たちの言うことは違う、と心の中で叫んだ。
「おい、無視すんなよ。なんか言ったらどうだ」
「喋れるだろ、口があるんだから」
「叩けば、なんか言うんじゃない?」
 細いやつが、にいッとさらに笑っていった。
 ぐいっと、私のほうに手を伸ばしてくる。いつのまにか、鼻の奥がジーンとしていて、目の前がぼやけていた。
 こわい。こわいよう。たすけて。かみさま。
 その時だった。
 ぽこん、と細いやつの頭の上に、何かがあたった。
「?」
 見ると、ガムの包み紙だった。

      ○
作品名:その光景 作家名:ツイスター