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フジイナオキ
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novelistID. 20353
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猫と二人- two persons with cat -

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開けっ放しにしていた美樹田を責めることなく、直ぐさま美樹田に
「外へ探しに行こう!」と提案した。美樹田も黙って頷くと、二人
は外へ探しに行った。けれど、夜も八時を過ぎた時間帯で猫を、し
かも黒地の猫を探し出すのは困難だった。
「駄目……。全然、見付からない……」葉月は息も絶え絶えに言う。
「うん、こっちも駄目、だね。やっぱり、夜中だと見つけづらいよ
……」美樹田も久し振りに走り回ったので、息が切れている。
「怪我は? 怪我はもうちゃんと治ってるの?」呼吸を落ち着かせ
ると、葉月は美樹田に聞いた。
「ほぼ完治している筈だよ」
「やっぱり、あの子、野良の方がいいのかな……」
「猫は土地に住み着くって言うしね」そこまでいうと、美樹田は葉
月と視線を合わせる。「でも、分からないよ。明日になれば帰ってく
るかも。猫ってさ、勝手に居なくなったかと思ったら、やっぱり勝
手に帰ってきたりするもんなんだ。僕の実家の猫もそうだったし」
「そういうものなの?」
「うん。だから、取り敢えず今日は様子を見て帰ろう」
「分かった……。じゃあ、帰ってこれるように窓を少し開けておか
なきゃね」
「そうだね。ちょっと、寒いけど」美樹田は口元を僅かに上げる。
「自業自得です」
  そういうと、二人は美樹田の家へ戻った。すっかり冷めてしま
った料理を温め直して食べ、葉月は片付けをしてから自宅へ戻った。
美樹田は葉月が帰った後、仕事帰りに買ってきた雑誌を読んだが、
あまり内容が頭に入らなかった。風呂に入り、歯を磨き、翌日の準
備をして、その日はいつもより早めにベットに潜った。猫一匹分だ
け僅かに開けた窓から入ってくる冷たい風が妙に肌寒くて、美樹田
はその日、毛布を身体に巻き付けるようにして眠りに落ちた。

 靴下を履いた名もなき猫は、翌日も、そのまた翌日も、美樹田の
家には帰ってこなかった。