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簡単三題噺 【さくらんぼ・魔法少女・ヘルプ】

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「ご、ごきげんよう・・・りりかるうぃっちさん・・・・」
私はひきつった笑顔を向け、走り出す。
三十六計逃げるが勝ちッ!逃げ切れるかどうかは五分五分、それほどまでに、魔法少女は、速い・・・ッ!
「あら、逃げれると思ってるのかい?」
男言葉だか女言葉だかよくわからない話し方をして、彼女は私の肩をトン、と叩く。
あ、やっぱり無理――――――
諦めにも近い心境で、足を止める。やっぱり、人間諦めが肝心だと思う。そう思って、死を覚悟する。
「んきゅっ」
変な擬音を発して、彼女は頭から地面にのめりこむ。
・・・・・・不運なことに、私が急に止まった所為で、先ほどまでの自分の勢いを受け止めきれずに、慣性の法則に則って地面へと激突した、ということらしい。
ちょいと抜けているけど、まぁそこが可愛いと一部の大きなお友達に人気らしい。
「りりかるうぃっち・・・・、さん・・・・大丈夫?」
返事がない。ただのしかばねのようだ。
「うーん、参ったよね。ねぇ怪人さん、そう思いません?」
展開についていけずに呆気にとられていた怪人は、話しかけられて「え、俺?」と驚いたように自分を指す。
「そう、君ですよ、君。」
ほかに誰が居るの。とは思うが、まぁ私が彼の立場でもきっと同じことをしたと思うので、言及はしないでおく。
「アレをやるんで手伝ってください」
その途端、いつも青い怪人の顔が更に青くなった。
左右をものすごいスピードで揺れ動く目を見る限りすごく嫌そうだ。まぁ、当然の反応だと思う、何故なら、アレだから。
「もう、仕方ないじゃないですか。そもそもどうしてこうなったんですか?」
そういえば、どうして彼は彼女に襲われていたのだろう。
ふと気になって尋ねてみると、彼は顔を紫にしてボソボソと語り始めた。怪人のくせに照れるなと言いたい。可愛くないし。
「さくらんぼ」
「は?」
あまりこの怪人と符合性のない単語だったからつい反応が遅れてしまった。それよりなんて言った?さくらんぼ?
「さくらんぼ?それがりりかるうぃっちに何の関係があるんです?」
さくらんぼってやっぱりアレだよね?茎が細くて赤い実がついててすごく美味しい奴。私の好物でもある。
閑話休題、
「で、そのさくらんぼがいったいどのような関わりを持っているというのですか?」
私がそう言った途端、怪人がまるで「知らないの?」とでも言いたげに目をキョドつかせた。
「今年のさくらんぼ、値上げが激しいだろ。だから我らが秘密結社エターナルフォースブリザードの誇り高き総統さまが、さくらんぼ買占めて一攫千金をねらうぉぶひッ」
・・・ふぅ。今回ばかりは、りりかるうぃっちの味方をしてやろうとおもう。別に彼女のためじゃない。私の食卓の平穏を守るためである。
だから私はそこらへんに突っ立っていた電柱で、怪人を一撃昏倒させてやった。拷問しない私、優しい!素敵!!
言い忘れていたが、この街で起きる残り七割の内の三割は、言わずもがな、魔法少女まじかるあ・ら・もーどである私の所為であることは、最早公然の秘密だった。「あぁ、暴力ってむなしい・・・」なんて呟きながら、私は電柱を手に、残りの怪人狩りに向かった・・・。