扉の向こうは別世界
翌朝、梓のポケットには、なぜか砂が少量入っていた。それに気づいた梓は、少し目を吊り上げた。階下の母へ向かって、半ば叫ぶように言う。
「お母さーん! ちゃんとパジャマ洗濯してよぉ! ポケットに砂入ってたぁ!」
「あんたももう中学生なんだから、たまには自分で洗濯しなさい!」
母の返事はまるでバッティングのようにすぐさま飛んでくる。
梓は納得がいかないながらも、制服に着替えて部屋を出た。
ばたり。
「ん?」
部屋を出て、ふと違和感。振り返ると、その正体に気づいた。部屋の扉を、自分が無意識のうちに閉じていたのだ。
「わぁ、癖治ったかも。なんでだろ」
梓は不思議そうに扉を見つめ、首を傾げた。
なんだか、昨日何かがあったような気がする。梓は苦手な知恵と記憶力を絞って考えて、思い出してみた。
さらさら、ひゅう、ぽん。
結果。何ひとつ、思い出せなかった。何かを見落としている気がする。気がするけれど、それは風に飛ばされてしまって、砂粒のようにあっという間になくなってしまった。
「ま、いっか」
手にはまだ砂がついていたので、さっと払い、梓はあらためて歩き出した。
「お母さーん! ちゃんとパジャマ洗濯してよぉ! ポケットに砂入ってたぁ!」
「あんたももう中学生なんだから、たまには自分で洗濯しなさい!」
母の返事はまるでバッティングのようにすぐさま飛んでくる。
梓は納得がいかないながらも、制服に着替えて部屋を出た。
ばたり。
「ん?」
部屋を出て、ふと違和感。振り返ると、その正体に気づいた。部屋の扉を、自分が無意識のうちに閉じていたのだ。
「わぁ、癖治ったかも。なんでだろ」
梓は不思議そうに扉を見つめ、首を傾げた。
なんだか、昨日何かがあったような気がする。梓は苦手な知恵と記憶力を絞って考えて、思い出してみた。
さらさら、ひゅう、ぽん。
結果。何ひとつ、思い出せなかった。何かを見落としている気がする。気がするけれど、それは風に飛ばされてしまって、砂粒のようにあっという間になくなってしまった。
「ま、いっか」
手にはまだ砂がついていたので、さっと払い、梓はあらためて歩き出した。