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律姫 -ritsuki-
律姫 -ritsuki-
novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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会長職としての雑務を行田の向かいで司がこなしていく。
その様子はすっかり手馴れたもので、行田もいまさらその内容を気にかけたりはしない。

司の仕事がひと段落つくのを見計らって、声をかけた。
「なあ、松下」
「なんですか」
今日の仕事は終わりにしたのか、片づけをしながらの返事。
「ちょっとこっち来い」
行田が自分の隣の席を指す。司も逆らわずに行田の隣へ席を移した。
「手、出せ」
言われたとおり両手を体の前に出すと、その手をしっかりと行田の手が包み込む。

「・・・こんなこと、ちゃんと言うのはちょっと照れくさいけど・・・。生徒会、よろしくな」
少しだけ高い体温が司の手にも伝わってくる。いきなりそんなことを言われるとは思いもしなかった司の目が見開かれた。けれど内容を理解するとすぐにそれを隠して、頷いた。
「・・・はい。先輩が作り上げたものを、守ります」
「うん。きっとお前はいい先輩になるよ」
「そうでしょうか」
「ああ」
「頑張りますよ。あなたみたいにはなれないかもしれませんけど」
「お前は俺みたいになる必要なんかないだろ」
「え?」
「ま、理由はそのうち分かる」
俺とは違って、お前には生徒会を一緒に作ってくれる仲間がいるっていうことに。

二人の両手の体温はすっかり同じくらいになっている。
「なあ。目、閉じろ」
言葉のままに従うと、司の手を握っていた両手が肩へ移る。
唇に柔らかいものがくっついて、濡れた舌が唇をなぞっていく。さらに口の中にまで侵入してきて、司の舌を絡めとる。
さすがにそこまでされるとは思っていなくて、驚きで体に力が入るけれども、肩に置かれた行田の両手で押さえられた。

「・・・んっ・・・ふぁ・・」

唇が離されると、ゆっくり目を開けた。
「俺の引退祝いってことで。今日は俺も、先に帰るな」
司の頭に手を置いて、行田が生徒会室を出た。

ぱたんとドアが閉まるのと同時に、我に返る。

キス・・・した・・・?

手が自然と自分の唇を押さえた。

・・・しかも、舌・・・入ってきた。

『付き合っている』という名目があるからには、それくらいあたりまえかもしれないけど、行田がこれまでそういうことをしてきたことはなかった。
普通のカップルのように手を繋いだりして歩けるわけでもないから、これまでは仲のいい友達のようにしているだけ。

それが今になって・・・。
どういうこと・・・?

「司、おるー?」
生徒会室のドアがノックされて、慌てて居住まいを正した。