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律姫 -ritsuki-
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novelistID. 8669
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夢見る明日より 確かないまを

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いつの間に池野と付き合うことになってしまったらしい。
しかも今夜また連絡が来るという。

・・・状況が飲み込めない。

それが孝志の感想だった。

とりあえず、こんな寒いところにいつまでいても仕方がない。

「・・・帰るか」

教室に寄って、鞄をとる。
司の席を確認すると、まだ鞄がおきっぱなし。
先生に呼び出されているといったが、進路のことでもめているのだろう。
おそらく、もっと志望校のレベルを上げるようにいわれているのだ。

「・・・司」
なんとなく、名前を呼んでみた。
誰もいない教室。帰ってくるのは静寂。

「池野、か・・・」
彼女のことは嫌いじゃない。
今まで意識してみたことはなかったけれど、どちらかというと好きな人間の部類に入るのではないかと思う。
去年からずっと、朝は一番に教室にいて、本を広げている。
孝志が教室に来るのは大抵2番。
それでも、他の教室にはまだ誰もいないような時間。

孝志の家を出る時間が少し早かったりすると、池野は花瓶の水をとりかえたり、寒い季節でも窓を空けて換気をしていた。
2年生のときは、たまにおはようと挨拶をしていた気もする。3年生になって、司も同じ教室に入るようになってからは、自然としなくなってしまったけれど。
朝早く教室にいる生徒というのは教師から雑用を押し付けられやすく、ノートを運んでいたのもそのためだった。

「もしかしたら、好きになってたかもしれないな・・・」

何年も抱いてる想いさえなければ。
自分に好きな人さえ、いなければ・・・。

「・・・叶わないなんて、わかりきってるけど」

でも、いつもその人の隣にいるのは自分。
その人はよくモテるのに誰ともつき合おうとしない。
そんな行動には淡い期待さえ感じるけれど・・・。

「いい機会、なのか・・・?」

司のことを諦めるためには。
池野と付き合って、池野を好きになって・・・。
そうすれば、皆幸せになれるのかもしれない。

池野のことも悲しませないですむ。
司にも迷惑はかからない。

自分が、この想いを諦めれば、それだけで済む話。

何年も想い続けてきた。
いつからかなんて解からないくらい、ずっと好きだ。

ちゃんとこの想いを自覚したのは、中学校になってから。

転機は、もう一人の幼馴染が大阪へ行ってしまったこと。
実は幼馴染は、司のほかにも、もう一人いる。
彼は、二人の家からは2軒ほど離れた3階建ての家に住んでいた。
両親が大阪の人だからか、いつでも大阪弁を話していた。
小学生までは、3人組でセット。それで良かった。

中学へ上がると同時に、彼ら家族は大阪へと引っ越した。
自分と司は2人でセットになった。
それから。
司が他の人と二人で歩いてるのを見かけると気分が悪かった。

松下の隣には岡本、というのが当たり前でいたかったのだ。
誰も寄せ付けないほどに。

「いい加減、潮時なのか・・・?」

想い続けるにも限度がある。

止めようと思って止められるものではないけれど。
水道みたいなものかもしれない。

水道の蛇口をひねっても、水を急に止めるのは無理。
蛇口をひねって、だんだんと絞っていって水は止まる。

それと同じ。
少しずつ、少しずつ、心の蛇口をひねって、止めてしまえば・・・。

それで、皆が幸せになれるなら。

司だって自分なんかとずっと一緒にいるより、可愛い女の子が横にいた方が絵になる。
少し気が強くって、可愛いというより綺麗という言葉が似合うような・・・。
飯田みたいなのが、いいのかもな。

飯田と司が一緒に歩いているところを想像する。
それがすごく絵になっていて、心のもやは深くなった。

「・・・ダメだ。帰ろう」

教室を出て、帰路に着いた。