夢見る明日より 確かないまを
3 その傷跡が消える頃
1
それまで大人から褒められることに関しては誰にも負けたことがなかった。
司くんは頭いいのね。
司くんは足も速いのね。
司くんはとってもいい子だわ。
こういわれるのが当たり前だった。
自分より優秀な存在なんて目にすることがなかったのだから。
でも、それも行田秀悟に出会うまでのこと。
2年生なのに、たった一人の生徒会役員。
腐敗してた生徒会権力の建て直しをする課程で、それまでの生徒会役員は追い出した、と聞いた。
だから、生徒会役員とはいえ、入学したての1年生でも副会長が回ってくる。副会長としてこなすべき仕事だけでも相当な量。終らせることができない分の司の仕事は、行田がさも当然かのようにこなしていた。
―――全然かなわない。
そんな状況では当然、行田からの生徒会長命令は絶対だった。
作品名:夢見る明日より 確かないまを 作家名:律姫 -ritsuki-