夢見る明日より 確かないまを
2
「司!孝志!」
入学式が終わって、二人に呼びかける声。
同じ中学の出身は二人だけだから、そんなに仲の良い人などいないはずなのに相手の声はいかにも親しげ。
二人一緒に振り返ると、なんだか懐かしい面影が二人の目に映った。
3年前に別れたときよりもずっと背が高くなって、声も低くなっているけれど・・・
「尚樹!?」
二人の声が見事にはもった。
「会うのは3年ぶりやな。二人とも変わったからわからんかったで?」
大阪弁の幼馴染が、同じ制服を着て、そこに立ってた。
小学校を卒業してから、3年ぶりの再会。
「尚樹、なんで!?」
大阪にいるはずなのに・・・。
「ビックリさせよと思って黙ってたんやけど、俺も東京来てこの高校通うことになってたんや」
「えぇ!?」
「そんなわけで、これからよろしく〜」
どこに住んでるか、とか、大阪にいるはずのお母さんは、とか、聞きたいことはいろいろあったはずなのに、そんな質問は全然出てこなかった。
ただ、このときは単純に幼馴染との再会が嬉しかった。
たまに電話で話はしていたけれど、3年も会っていないなんて思えないくらいにすぐに馴染む。
「俺、孝志と同じクラスやった」
「えー、俺だけ仲間はずれ?」
「そういうなよ、司」
「だって二人は1組で俺は6組なんて遠すぎる」
「ええやん、司やったらすぐ友達もできるやろ」
「そりゃそうだけどさ」
話をしながら、それぞれの教室に向かうために別れた。
同じ5階でも、1組と6組は遠い。
司は一人で、6組への廊下を歩く。
尚樹と孝志は同じクラスか。
尚樹か、懐かしいし、会えたことはすごく嬉しい。
また昔みたいな仲良し3人組になるんだろうか。
・・・それは、微妙。
尚樹が帰ってきたことが嬉しくないわけじゃない。
久しぶりの再会を嬉しいとは思ってる。
でも・・・
もし、仲良し3人組のまま、3年間が過ぎてしまったら?
それでなくても、
もし、本当にもしかしての話、俺と孝志が上手くいったら尚樹はどう思う・・・?
仲良し3人のままではいたくない。
でも、仲良しの3人でいられないなんていうのも嫌だ。
・・・矛盾だらけ。
尚樹が帰ってきたことは嬉しい。
でも、さらに何も進めなくなってしまった。
俺たちは平行線のまま、ずっと交われないのかもしれない。
フェンシング部を見学に行って、すぐに入部した。
それから生徒会。
小中学校のころも学級委員を何度もやってるし興味があった。
説明会の日程を確認して、生徒会室の場所も確認しておいた。
「司、生徒会に入るのか?」
後ろから突然声をかけられる。
「え?」
振り向くと、孝志の姿。
「ああ、うん、生徒会やってみたいなってちょっと思ってて」
「そっか・・・俺もやるかなあ」
「孝志も?」
「ああ、生徒会とか一回はやってみたい気がする」
「じゃあ一緒だ。説明会は26日だってさ」
「ああ、一緒に行くだろ?」
「うん。・・・・尚樹も誘ってみようか」
「・・・そうだな」
3人になると、いきなり二人で行動するってことが難しくなる。
尚樹を誘ってみると、生徒会になる気はないけど、生徒会室には一度入ってみたいから行く、と返事が返ってきた。
作品名:夢見る明日より 確かないまを 作家名:律姫 -ritsuki-