だうん そのに
つまりは、俺の旦那は、家に俺がいることを望んでいるということだ。まあ、そりゃそうかもしれへん、と、同居してからの状態を考えたら頷けるものがある。深夜残業なんて当たり前。土日も忙しければ休日出勤。ゆっくりするのは、年末年始ぐらいという過激な生活態度だった。
その生活を支えていたのが、花月のほうだ。家事全般を請け負って、へろへろの俺が胃潰瘍にも肝炎にもならずに、どうにか働けていたのは、そのフォローがあってこそのことだ。
・・・・・とりあえず、家賃の負担分ぐらいは、どうにかしとかんとな・・・・・
当座の生活費には、なんら問題はないが、もし、俺が本格的に専業主夫化したら、やっぱり家計は厳しい。交通の便がいいので、このハイツの家賃は、それなりに高い。朝から夕方までのバイトを探して、ちまちまと稼げば、どうにかなるだろうか、と、俺は考えている。今までの給料が破格だったから、生活費を、こちらで負担していたから、それがいきなりなくなったら、さすがにまずいだろう。
・・・でも、できたら、花月の希望は叶えたいんやけどなあー・・・・・・
土日祝日が休みで、定時上がりができる仕事なんて、そうそうあるもんでもないだろう。それならバイトでも同じだ。だが、それだと実入りも悪くなるわけで・・・・・はてさて・・・・どうしたもんじゃろか・・・・・・
本を読んでいるつもりで、窓から見える空を見上げていた。引越ししてもええかな、とか思い直して、また本の字面を追ってみる。
・・・・・・もう少ししたら買い物に行こう。チラシのチェキを買おて、それから、クリーニング屋も寄ってこなあかんな。・・・あいつの職場に、もうちょっと近いとこに引越したら、どうやろう? あっちは田舎やから家賃は安いはずやしな・・・・・・・
やっぱり、字面を追っているつもりで、空を見上げていた。
「あかんわ、俺。動こう。・・・どうも止まると、余計なことばっかり考える。」
文庫本を閉じて立ち上がった。
外へ出たものの、時間も早いから散歩がてらに遠回りをした。見知らぬ公園に行き当たって、そこのベンチへ座り込む。さすがに寒い時期だから、人気はない。鳥の囀りが、樫の木から聞こえてくる。
・・・・なんていうか、長閑や・・・・・
自覚なく笑っている自分に呆れた。こんな時間があるのも、旦那がいてくれればこそや、と、思ったら、やっぱり引越しするかと決めた。