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月下部レイ
月下部レイ
novelistID. 19550
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恋愛遺伝子

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訳のわからないことを涼城が言うとる。頭が混乱して完全に思考が停止した。

「……ああん」
艶を含んだ声が出て、だらしなく開いた唇の隙間から、涼城の舌が歯列を割って侵入してきた。
口づけが途端に、深いものに変わる。
涼城の舌が自分の舌を絡め取って吸う。
クチュッという、イヤらしい音が耳の奥に届くと、身体が痺れたようになって、力が抜けてゆく。
粘液性の銀糸を引いて唇が離れていくと。
涼城に支えられてやっと立っていた。
焦点の合わぬ瞳で涼城を見た。
なんでこんなことを涼城は……。

「その気になったか?」
「……その気って」
「俺のものになるかってことに、決まってるだろ」
「俺のもの?」
「お前はバカか、まだわからねえのか。俺の恋人になるかってことだろ」
そう強い口調で言っても、涼城は長い指を日下部の髪に絡めて遊んでいる。
余裕綽綽な涼城。

「やて、俺は涼城と同じ男やないか」
「じゃあ、お前はこんなこと、俺とするのは嫌なのかよ」

はっきりと涼城に問われた。
でもすぐに返事はできそうにない。
もちろん嫌なわけがない。それは一番自分が知っとる。
涼城が好きで。その好きも友達とかの好きではないことを、さっきはっきりと自覚してしまったのだから。
よくよく思えば、涼城と初めて会った瞬間に、恋に落ちたのではないかと思う。
あの時、涼城からいい匂いがした。とても魅了的で、好きな匂いだった。
理由はない、ただ本能というべき直感が、涼城とは歯車が合いそうだ訴えていた。涼城を好きやと思うた。
その勘は当たっていた。すぐに親しくなったし。涼城が近くにいるだけで、穏やかな気持ちになれる。
当たり前のように、どんどん涼城を好きになった。

「なあ、どうなんだ。お前が嫌なら、もうしねえ」

真摯な顔を向けて、そう言われたら堪らない。

「嫌なわけ無いやろ。俺かて涼城としたい……でも俺も男なんやで」
「お前がしたいのか?おまえが上……」
はぁ?涼城の意図って。なんや。上って……

「そうやない、そうやない。そういう問題やない。男同士で友情を飛び越えてもええんかということや」
「お前、そんな常識にこだわるヤツなのかよ」
「お前はそやないんか」

涼城は悪戯っ子のようにニヤリと笑った。

「初めて会った時、おまえからいい匂いがした。そんな匂いを感じたのはもちろん初めてだった。
コイツは俺のもんだと思ったんだぜ。俺は俺の勘を信じる。おまえも同じようなこと、感じてたんじゃねえのか、俺はそんな気がしたんだがな」

揺るぎない涼城の言葉に返す言葉もない。
それにしても、涼城も自分にいい匂いを嗅いでいたなんて、びっくりや。
言葉は違っていても、涼城も自分も同じようなことを感じていたのだ。


「おまえMHCって知ってるか」

MHC。確かテレビでやってたのを見たことがあるような気がする。

「なんか、恋愛遺伝子とかいうやつか、詳しいことは知らんけど……」

「あぁ、MHCは日本語では、主要組織適合性複合体と呼ばれてる。免疫反応に必要なタンパク質を作る遺伝子の複合体だ。
MHCは万単位以上の種類があるらしいから、ほとんど、人によってそのタイプが違うということだ。
まあタイプが違っていても、似通っているものから、全く違うものまで様々のケースがあるんだとよ。
そのMHCのタイプでいろんな免疫力に差が出てくる。
そこで肝心なのが、免疫力のタイプの違いだ。人間は自分と違ったタイプのMHCを持った奴に惹かれるらしいぜ。
その方が、いろんな病気に免疫にある子孫が残せるからな。それが、MHCが恋愛遺伝子と呼ばれる所以だ。俺も、おまえもMHCを嗅ぎ分けたんじゃねえのか」


本能が求めあう相手。を見つけたというのか。でもその前に大きな問題が。

「恋愛遺伝子ちゅうのも、涼城と俺が好きあっとるのもわかったけど……」
「なんだ?」
「……俺らに子孫なんて関係ないやん」

MHCで惹かれ合う一番肝心の理由が、俺らには必要ない。だから……。


「子供を作ることだけが、人間の使命じゃねえだろ。本能が教えてくれた相手とめぐり合っても、大事なのはそれから先じゃねえのか。どれだけそいつが大切で、お互いを幸せにできるか。
人間としてどう生きていくのか、その場面に、お互いを必要とするのなら、最高だと思わねえか」



「涼城……」
なんや、涼城の言葉が涙が出そうなほど、嬉しい気がする。

「なあ、これから試してみねえか、俺達の直感」


たぶんおまえと俺のMHC、一つも同じの無いんじゃねえのか。と耳元で囁かれた。
涼城も自分も、同性という範疇を超えた恋愛遺伝子を本能が見つけてしまった。


めぐり逢ったら最後。もう離れられそうにない。
神の定めた運命の相手。



溺れるように、恋に堕ちる……。



涼城の綺麗な細い指先が、唇をなぞっていく。





fin.





作品名:恋愛遺伝子 作家名:月下部レイ