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さかきち@万恒河沙
さかきち@万恒河沙
novelistID. 1404
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Light And Darkness

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 ――沈黙。
 そして悠弥は目を瞠る。その言葉が示す意味を理解したからだ。
「御師たちはどこかで互いを探している。百年かかってこうしてあなたに出逢えて……それは確信になりました。……あなたはいつかまた、追い詰められるのかもしれません。けれど我らの巫女姫……宇受女さまはおなじ空の下、どこかで生きています。ただ……休むために眠っているのです。私たちは全員、生き長らえた。残酷だけれど」
「……まさか」
「天照さまは、百年前の状況を乗り越えよと、仰せなのかもしれません……ね」
 背を向けて逃げることは……許されない。
「後悔しないよう、努力しましょう。同じ過ちを繰り返さないよう。……最善を尽くしましょう」
「……忍日……」
 それを、どうとったらよいのか悠弥にはわからなかった。義貴  忍日命は、遠いあの日、めちゃくちゃに精神を叩き壊された自分をまっさきに許すといってくれた。もういいから休めといってくれた。時間が経っておもうことは  巫女姫を心の底から、愛しているということ。どれほど憎まれていようとも、……逢いたい。触れたい。許しを請いたい。跪いてもいい。
 苦しい。この煩悶は、苦しくて仕方がない。けれど、……悠弥は首を振る。そして、笑顔になる。
 乗り越えろというのなら……その機会が
与えられるというのなら、乗り越えて見せる。
 いまは――彼に――救いに出逢えたことだけでいいから。いいから、……まだしばらく、巫女姫をもとめて残忍な悪夢を見続けることになっても、それはやはり罪の証しで。
「……お前に逢えて、よかったよ」
 義貴は了解の微笑みをくれた。


 ドアが開く。
 由美子がやってくる。つくり物ではない笑顔が、久し振りだ。
 義貴が、素直な笑顔を見せる人。
 いつかまた、おいつめられてゆくとしても。いまは――天に祈るのみ。


 女神に――巫女姫に、いつか自分も……こんな笑顔を見せられるように。