彼女を幸せに
――私、あなたが一番好き。だからずっとここにいたいの。
電流が走ったようだった。
身体つき、手、言葉の選び方。大元の性格以外、なにもかもが同じだった。優子の中にはなんて圧倒的な遺伝子が組み込まれているのだろう。
やがて彼女も様々な人間に囲まれ、揉まれて今の健やかな気性を壊されてしまうかもしれない。そうしたらあの、都和子を守っていた棘めいた気配をさせた女になるかもしれない。
そうはなってほしくない思いと、生き写しになってもらいたいと願う浅ましさが胸の裡に同居する。
「……頼むよ」
今度こそ都和子を幸せにしてやりたい。誰にもなにも告げずに消息を絶つなんてことも絶対にさせない。彼女とできなかったことを、どんなに細かなことからでもやり直そう。今度こそ、「家庭」をまっとうさせるのだ。
「もう、出て行かれるのは嫌なんだ」
二度と離すものか。
決意を込め、両の手でぎゅうっと目の前の小さい手を閉じ込めた。