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木村 凌和
木村 凌和
novelistID. 17421
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メリッサに愛を

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「技師の方と、サツキ先生がいて、私の頭に何かしたみたいでした。次に眼が覚めた時、人は誰も見ませんでした。ただ、テレサだけは見たんです」
 先を歩くミリーの表情は見えない。
「テレサは血だらけでした。全身ぼろぼろで、足を引きずって歩いていました」
 想像できる真相は一つ、テレサがメリッサを滅ぼしたという事だ。
「私にはそのとき、わかりませんでした。どうしてテレサだけ、血だらけで生きているのか」
 地下の扉は全て開いていた。開いているというより、全て砕かれ、壊されている。
「テレサはここまで来ました。それで、この島を落としたんです」
行き止まりには他の扉の倍はある大きさの扉があった。半分が崩れ、人一人が通れる程の隙間があいている。
「・・・テレサ」
 部屋には瓦礫が山になっていた。棚という棚が全て倒れ、ミリーの喉に付いている物の様な機械が散乱していた。
 瓦礫に埋もれて、床に骨が散らばっている。元は白かったのだろう、薄汚れた革のファイルがその近くに落ちていた。
 これが。カーターの声は咥内で消えてしまう。
「私達には出来ない事の方がきっと多かったんです。それを、誰もわかっていませんでした」
 言代機の片割れが眠る横に、ミリーは瓦礫に背を預け座った。ずっと大切に抱いてきたファイルが腕から滑り落ちる。顔色が悪い。土気色の顔で微笑み、
「ありがとう、カーター」
 言ったきり、ミリーは動かない。

100708
作品名:メリッサに愛を 作家名:木村 凌和