メリッサに愛を
「技師の方と、サツキ先生がいて、私の頭に何かしたみたいでした。次に眼が覚めた時、人は誰も見ませんでした。ただ、テレサだけは見たんです」
先を歩くミリーの表情は見えない。
「テレサは血だらけでした。全身ぼろぼろで、足を引きずって歩いていました」
想像できる真相は一つ、テレサがメリッサを滅ぼしたという事だ。
「私にはそのとき、わかりませんでした。どうしてテレサだけ、血だらけで生きているのか」
地下の扉は全て開いていた。開いているというより、全て砕かれ、壊されている。
「テレサはここまで来ました。それで、この島を落としたんです」
行き止まりには他の扉の倍はある大きさの扉があった。半分が崩れ、人一人が通れる程の隙間があいている。
「・・・テレサ」
部屋には瓦礫が山になっていた。棚という棚が全て倒れ、ミリーの喉に付いている物の様な機械が散乱していた。
瓦礫に埋もれて、床に骨が散らばっている。元は白かったのだろう、薄汚れた革のファイルがその近くに落ちていた。
これが。カーターの声は咥内で消えてしまう。
「私達には出来ない事の方がきっと多かったんです。それを、誰もわかっていませんでした」
言代機の片割れが眠る横に、ミリーは瓦礫に背を預け座った。ずっと大切に抱いてきたファイルが腕から滑り落ちる。顔色が悪い。土気色の顔で微笑み、
「ありがとう、カーター」
言ったきり、ミリーは動かない。
100708