十五の夏
諦めることに慣れていた。何かを達成しようだなんて偉大な心持は、余命三カ月の少女には無かった。でも、本当は気づいていたのだ。世界を変える必要なんてないことも、死ぬだけならそこには何も残らないことも。死んだら全てと切り離されるだけだ。大切な人や、大好きな場所や、思い出から、全てから切り離されるのだ。だからなおさら悔いなど残してはいけない。少女は知っていた。自分は、諦めることに慣れていたのではないと。諦めることがどんなに楽なのか、受け入れて進むのがどんなにつらいのかを知っていただけなのだと。頑張っても報われないと決めつけ、諦めたふりをしていただけなのだ。そうやって自分の悔いを隠そうとした。隠せば自分すら悔いに気づくことなく終わることができると知っていたから。しかし、彼女は最後に悔いた。家族との楽しい思い出の中の海を見て、少女は初めて、もっと生きたいと思い、願い、そして悔いてしまった。
完