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だいなまいと そのに

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それらを親に頼むことは、浪速にはできなかったらしく、堀内に、そういう書類の偽造は可能であろうか、と、相談を持ちかけた。
「確かに、金さえ積めば、それはできるけどな。わしでよかったら、それぐらい貸してやるで。」
 それまでの二年間の働きを見ていて、堀内は、その程度には浪速を信頼していた。親との不仲は、少なくないが、ここまで、親と確執があるのも珍しい。二年間で、それをずっと堀内は見ていた。無関心であるだけではない。何かしら、親子でありながら繋がりが薄いのだ。
・・・あれが決定的やったな・・・・
 親に保証人を頼めない子供。年若いうちから働いて、独立しなければならなくて苦労している浪速は、現代社会より古い世界の人間みたいだった。


 今、対面で、のんびりと酒を呑んでいる相手を眺めていて、しみじみと、「よう、あんなええヤツを見つけたことや。」 と、口から出た。こんな壊れておかしい人間に、あんなお人好しがくっついた。
これこそ奇跡と言わずして、なんと呼ぼうと、堀内は思う。
「割れ鍋に綴じ蓋夫婦と呼んでくれ。」
 そして、浪速は苦笑して、そう返事した。相変わらず、憎まれ口ばかり叩いている浪速だが、それでも、この繋がりだけは大切にしている。子供が親離れしたような寂しい気分を、堀内は味合わせてもらった。だが、浪速が最後まで壊れずにいられるのは、その繋がりのお陰であるから、無下にもできないのが辛いところだ。

 
作品名:だいなまいと そのに 作家名:篠義