むべやまかぜを
大井一矢がそう認めたのだったら、多分、そうなのだろう。それは、妹分にとっては僅かだが心の慰めとなるもの。。
「そっか。たっつんは一流だったのか。アネキが言うんだったら、間違いないよな……うん。間違いない」
少女はちょっと淋しそうに笑った。
「でもやっぱり、ちょっと淋しいよなあ」
少女の友達は来年の春を臨むことはないのだ。そして、少女は、
――あれはひどい仕事だったよなあ。
と語り明かす相手を永遠に失った。
「春は、追い立てられるみたいで嫌いだよ」
物書きヤクザはブランコの上でつぶやいた。
夜風に八重桜のぼってりした花が揺れている。