感情の切断
プロローグ
もう、戻れないのだな。
あの日常に。
ああ、なんと惜しいことだ。
この体尽きようとも、私は探し続けるぞ。
後戻りはできないのだ。
あの時、お前は聞いたな。
「どうしても、行くのですか」
ああ、なんと優しき子よ。
我が憂き目を変わりに受け入れてもなお、あいつを許すというのか。
私はあいつを探さなければならない。
どうしても。
あの残虐な殺人鬼を、生かしておくわけにはいかない。
…そう、思っていたさ。
いつからだろうな。
怒りの矛先を向ける先が違っていた。
なあどうすれば良い?私は何がしたいんだ?
分かっているとも。矛盾していることなんて。
だがどうすればいい?
鬱陶しい感情が付きまとって、とめられない。
これが、人間というものか。
感情に左右されるのが人間だというのか。
…いや、違うはずだ。
違うと私は信じている。
…ああ、でもだめなんだ。
どうしてとめられない…
人を、殺してしまう。