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私たちのワンダーランド

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 刺さってて、と続く言葉に聞こえなかった目的語を理解する。ああ、そういえばうさちゃんはとても小柄だ。目線がちょうど、あの女の子の胸ぐらいだから。だから、私は男の子が血まみれになっている姿が一瞬だけ見えたけれど、うさちゃんには―――刃物が刺さった女の子が見えたんだ。
 怖がるだろうから男の子のことは黙ってたのだけれど、無駄だったらしい。
「どうしよう、アリス。きっと彼氏のほう気づいてないよね?と、とり憑かれているのかな!?」
「いや、男の子の方も死んでいたから、それは大丈夫だよ」
 震えるうさちゃんに真実を告げると、彼女は目に見えてほっとしたような表情になった。震えも止まっている。怖かったのは死んでいる女の子を見たからではなく、男の子がとり殺されるかもしれないこと、だったのか。
「うー、よかったー」
 やっと笑顔を浮かべてくれた彼女に私もほっとして、サーティワンの看板を指差す。
「ほら、もう着いてるよ。サーティワン」
「私クッキー&クリームがいいっ」
「はいはい」
 予想通りの答えに笑いをこらえながら、私は不思議でもなんでもない、当たり前の世界に戻った。


**


「アリス、ごめんね」
 店内に入った友人を見送る少女は、悲しそうに笑う。
「そこから先はアリスの世界だから、私、一緒に行けないんだよ」
 

**


 コーンに乗っけたチョコレートミントとクッキー&クリームを見て、私は思う。
 ―――ああ、確かに色は違うけれど、模様は同じだ。
「はい、ただいまうさちゃん」
「ありがと~」



 こうして、私たちのアイスクリームをめぐる冒険は終わった。
 母のつけた名前のせいで、変な世界に迷い込んでしまったけれども、隣にこの友人がいるのなら、それも悪くないと思う。
「じゃあね、アリス。バイバイ!」
「またね、うさちゃん」

 ―――そして、私たちは、それぞれの家に帰っていった。
作品名:私たちのワンダーランド 作家名:白架