影踏み
「でね、その空想のもっともおかしなところが、自分の心は天邪鬼なんだって。
だから自分の気持ちとは正反対なことを話してしまうんだって。
ね、おかしいでしょう?」
――足下が崩れ落ちるような気がした。
目の前の女性は僕に何を言ったのだろう。
あの心の声が、彼の気持ちの反対の言葉を話す…?
……そんな。
だって、だってそれじゃあ、
彼も僕のことを……
それなのに――
「あら、あなたの影面白い形をしているのね。何かの影が重なってそう見えるのかしら」
振り向くと、そこにある僕の影は、
髪に寝癖がついている子供の形をしていた。
完