先生の特別
現在5時30分_____
私は顔を洗い、ジャージに着替える。
そして、タオルを持ち、バスケットボールをわきに抱え外に出た。
マンションのすぐ目の前に公園がある。
古びたリングは、朝日に照らされ少しだけ新しく見える。
誰もいない公園。私はいつもここで練習している。
フェンスの傍にいあるベンチに、タオルと携帯を置いた。
ボールを地面に2,3回衝く。
この感触。この感覚。
バスケットを感じる________
「お!日野か?」
後ろを振り向くと、そこには高橋先生の姿があった。
何故ここに?
「あの…」
「ん? 練習しに来た。家の近くに広い公園があるなと思って」
「へぇ…」
私はそう言うと、くるっとリングのほうにむき直し、ロングシュートを放った。
私の放ったボールは、綺麗な弧を描きリングの吸い込まれる。
それから私は、シュートを打ち続けた。
ロングシュート、ジャンプシュート、ドリブルシュート…。
ガコッ!
そして、私のシュートは右にそれた。
ボールを追いかける。
すると、ボールはスイっと拾われ、先生の手に渡る。
シュパッ…
身長182cm、サラッとした黒髪に程よくついた筋肉。
あの黒髪が風になびく。
長い指から放たれたボールは、朝日と重なり、リングに入った。
「…キレイ」
____綺麗。
その言葉しか浮かばなかった。
先生の黒髪も、シュートも、身体も、
すべてが綺麗だった。
「どう?俺のシュート。ちっとナマってたけどな」
ははっと笑い、ボールを衝く。
今度はドリブルシュートをした。
スピードをどんどん上げ、抜群の瞬発力でシュートする。
「日野?」
私はただ、先生のバスケを食い入るように見ていた。
こんなにきれいなバスケ、観たことがない。
先生は、ボーっとしてる私にボールをパスする。
「ほれ。お前、バスケ上手いなぁ」
ははっと笑う。
「一応、バスケ部ですから」
少し照れくさいながらも、笑った。満面の笑みで、褒められたことなんかなかったから。
「日野って、笑うと可愛いな」
「え…」
今、可愛いって言った。
そして先生は私の髪を、くしゃっとなでる。
あ…
この時、思ったんだ。
私、先生が好きだって。
先生の特別になりたいって。
私は、高橋先生が好きです______