お腹が、痛い(8)
あのガキを恐れてガタガタ震えていた一週間の間に、例の二人は姿をくらませてしまっていた。
おれだってこんな仕事はもう辞めたかったが、そんなことが出来るとは思えない。
秘密について、「世界」について知られててしまった以上、「協会」側としても野放しには出来ないだろう。
辞表なんて出したら、殺される。
例の二人が消えてから、もうすぐ一ヶ月が経とうとしていた。
「…もう、一月経つんだ…」
「ああ、でもまだこれで終わりゃしねーぞ。」
「でも…淋しいよ、俺。」
「仕方ねぇだろ。アイツを巻き込む訳にはいかねぇだろうが。」
「うん…」
「俺達がここ、東京に居るってことは、誰にも教えちゃいない。もう会えないと思ったほうがいい。」
「…俺、絶対に「変えて」みせるから。そしたらまた、会えるんだろ?」
「……たぶん、な。」
「ふう、やれやれ。「協会」の考えていることはどうにもよくわからないねえ、」
校舎で唯一明かりの灯った職員室で、白粉達磨は一人愚痴った。
作品名:お腹が、痛い(8) 作家名:アレキザンダー・ジョン