あなた=?
「さて、戦争の始まりだ」
少女は船の縁に手をかけながらも暗く、鳥が一匹もいない海を見ていた。
「シレーヌ様、どうかしました?」
シレーヌと呼ばれた少女はゆっくりと振り返ると自分の名前を呼んだ人物を見た。
「……静かな海だな、って思っただけだよ。アリナ」
シレーヌは自分の付き人であるアリナを見るとアリナはシレーヌの目の前に立った。
「シレーヌ様、このパーティーの理由がわかっていらっしゃるのですか?」
アリナは溜め息混じりの声でシレーヌに問う。
「……王子がお嫁さんを決めるために開かれたパーティー」
「そうです! だから王子にご挨拶ぐらいは」
シレーヌは再び海を見る。
「……船の上でパーティーはするものじゃあないよ」
「何か、言いましたか? シレーヌ様」
「別に」
シレーヌは首を横に振ると前髪で遊び始めた。
そのシレーヌとアリナに一人の少年が近づいてきた。
「……お久しぶりです。アリナさん」
シレーヌは一人の少年の声で動かしていた指を止めた。
「お久しぶりです。王子」
後にいるアリナがお辞儀をするのを感じながらもシレーヌはゆっくりと振り返った。
「シレーヌも久しぶりです」
「……お久しぶりです。王子」
少し引きつった笑顔を浮かべながらもシレーヌは王子を見た。
「シレーヌ様、私は部屋に戻っていますので」
「わかったわ」
アリナはシレーヌを気遣うように船室に入っていった。
シレーヌはその後ろ姿を見ていたが王子の視線を感じたため再び王子を見た。