ｔｒａｎｓｃｅｎｄｅｎｃｅ
作品名 ｔｒａｎｓｃｅｎｄｅｎｃｅ 作 丸山 雅史
ｔｒａｎｓｃｅｎｄｅｎｃｅ
僕はこの悲しみを極限まで高める為にこの唄を聴く。喉の渇いた小さな世界
の峡谷の縁から理想郷の四月を見つめると、僕は必然的に運命を超越しなけれ
ばならないことに気付いた。僕の全身を冷たい風が横切る。風と風の合間に僕
はビックバンを連想する。そして僕はもう運命から逃げないこと、この感情を、
心象を、四次元以上で表現することを何処かの世界の神様に誓ったのだ。
瞼を閉じれば、アイヌ民族の夜の踊り、そして民謡が想起される。脳味噌や
鼓膜が上手く機能しない人々にも彼等の伝統は伝承されていく。「死にたい」
と心願している風が僕の耳の中で小さな渦を巻く。僕は君達のことを何でも知
っている。何故なら僕の前世は神様の脳味噌だったのだから。有り余る力、持
て余す悲しみ。僕は君達の思考の上空を常に飛んでいると思っていた。という
のは大きな間違いであり、僕はつい先程、夜明けが来る前に飛行場から離陸し
たのだ。伊勢海老が僕の心臓の形をしている。僕の口の中はミュータンス菌の
戦争跡地で一杯だ。何故なら僕は君達いや、詩の言葉達を生む為に沢山の栄養
素が必要なのだから。
偉そうな僕の発言に十年前の恩師達は絶句する。偉そうな僕の文章に現在の
恩師達は憤激する。死に近付いた人間がぽつりと呟くよ、「君はいつも時間を
気にしているね」。僕は彼に反抗する。「君は時計盤の外れた時計塔のようだ」、
と。彼は僕に暴力をふるい始めるが、僕は彼に、「君はモラ男ばかりだと思っ
ていた」と殺意を押し殺しながら罵倒する。罵倒する、ったら罵倒する。
愛しき女性が僕に改行を求めた。美しき女性ではあるが、彼女は「愛しき」
女性なのだ。僕は彼女に僕の心の形をした伊勢海老を塩で茹でてもらい、それ
を真っ二つに割り腹の肉を卑しい程に頬張る。するとミュータンス菌は死滅し、
彼女が僕に溶け込んだ後、何らかの喪失感を生まれて初めて味わう。僕はこの
喪失感を一生、解き明かすことはできないであろう。網罠に掛かった伊勢海老
の宇宙人が言うよ、「お前の心を一生惑わし、擽らせてやる」、と。僕は彼等
について考察し、単なる僻み、妬みに苛まれていることに大爆笑し、長靴の底
でぐりぐりと踏み潰し、大して硬くもない甲殻を粉々に砕いた。
さようなら、超越された跳び箱達よ。さようなら、絶望の欠片達よ。新しい
中世界が僕を出迎え、何らかの形で僕の左手は冷え切る。旧世界が、氷河時代
が僕の涙を孤独にする。伊勢海老の甲殻の破片は凍り付き、僕の右手は春を迎
え、パソコンの心臓、太陽から無償の熱を浴びる。僕は氷河期の死刑人、新中
世界の死刑執行人です。瑞々しい伊勢海老の肉の川、せせらぎ。中庸の境界線
は二次元、それとも三次元？ そうです、僕は四次元です。蒲公英のポンポン
がしゃんしゃんと鳴り響く聖なる夜。リズミカルな躍動する律動。Ｓ．Ｔ．Ｐ
ＬＥＡＳＥ。夢への番人達は僕に更なる超越を求めていますよ。
興奮した悲しみ。現状、遺された物に甘んじる僕。息を潜めるストーリー・
テラー。左手が右手に愛を求めて居る。ハイデガー、ヴィトゲンシュタイン？
二つは性交し、何も生まずにバスルームのシャワーによって、流された死骸は
植物の恵みと共に排水溝を伝い、下水処理場に赴き、ハロー、グッバイ、小さ
な世界の峡谷の喉を潤す。ぼ、僕の喉さえ。神風特攻隊のことを想うと胸が痛
む。ひどく、深く。「君には我慢強さが無くなったね」、また一歩死に近づい
た鏡に映る僕の醜い心は言うよ。かっぱえびせん。
ｗｏｍａｎ
うねる心臓の道を行く。アップダウンの激しさ。オフロード車が僕の背中か
ら脳天にかけて右タイヤ二つで轢いて「うさぎとかめ」のゴールを目指す。熱
風が心臓の道をうねり、僕の心とは如何なものか？ と自問自答させられる。
さようなら、凶悪宗教団体。僕は天国行きの地下鉄のシートを独占し、女性が
ヘロインでイカれた男女四人組に転ばされた現場に遭遇する。ピンクフロイド
のデジャヴ。これは、「狂気」だ、と僕の本音は地下鉄を照らすトンネルの灯
りに照らされて居る。高校の重要な式典に欠かせない赤と白のツートンカラー
の垂れ幕にその女性の遺体を包む。心は常に己の盾とならなければならない、
と僕の本領を発揮させてくれない詩作品は語るよ、僕の鼻腔から飛び出した二
本の地下鉄は、一本は残尿感を解消させる為のチューブとなり、もう一本は心、
つまり新たなアイディアに満たされた迷子のリトル・キャットの脳髄と化する。
散文さんよ、僕の心を開いてくれてどうも有り難う。
海が在る。川が在る。心の防波堤？ 僕は涙する。曜日の消えた世界に現実
も、非現実も在りはしない。ただ、在るのは、僕の影の抜け殻だけ。１９０７
年に西欧の海岸都市は水没しました、そんな記述は何処にもありゃーしません。
と、小学六年生の僕の女性担任は全面否定し、夜中、旦那と如何わしくない行
為を働く。どうして？ 自転車屋の駄菓子屋さんの女性店主は言うよ、「私達
は埃塗れの天使なのさ」。
水道水。クリームソーダー味の粉薬、を、生涯を終えたばかりの女性の口の
中に注ぎ、僕の小指でその粉薬が完全に溶けるまで何度も何度も掻き回す。「僕
達は死にました」、セピア色の空に短冊を掛け、ただ誰かの太陽光だけが僕の
平野と眼球を乾かしてくれる。「何が正しくて」、「何が正しくないか」？ 疾
走するしか無いですね、と大学教授。僕と彼は考古学について考察する。彼は
時価千億円の人の心の化石を金庫に入れ、山口県の壇ノ浦にわざわざ入水しに
行く。「詩への想像力とは、結局は宇宙と同じく有限であるはずだ。何故なら、
其れが文章となりラヴェルの水面に書き記されるからだ…君は一体、何が私達
を救うと思っているのかね？ 金か？ 金なのかね？？」。僕は乾涸びた眼球
を現実から遮断する。
瞼の裏には幻想的な世界が広がっている。地下鉄で命を落とした女性は、終
電後の電車倉庫の中で、命を僕の左手の灯りを頼りに探している。いつまでも、
何時までも。僕はその様子を、時間を気にせず文章化する。さようなら、携帯
電話よ、左足の踝に見えない足枷の鉄球があらゆる女性の氷の仮面を砕き、僕
を無力感に陥れる。僕は幸せ者です、僕は純粋無垢な心の持ち主です、僕の人
影は偽善者、又は猜疑心の強い壇上の権力者です。うねる心臓の道は黒霧がか
かり、イグアナが目玉をぎょろつかせます。心臓の下半身に苛立ちます。生物
の時間は終わりです。これから私はパンストを脱ぎ、グラウンドの登り棒を使
ってストリップを披露します、と白亜の女性は僕一人にだけ語り掛ける。蛇が
彼女に纏まり付いており、舌を閻魔大王に抜かれた、生涯を終えたばかりの女
性はクリームソーダー味の蘇生薬を胃に流し込むのです。
寂しい芝生の為の午後。ストレートティーと愛犬さえ存在すれば、この冷た
い.に鳥肌など立てずに済むのに。僕は窓際の壁に凭れ掛かり、受験生の頃の
ｔｒａｎｓｃｅｎｄｅｎｃｅ
僕はこの悲しみを極限まで高める為にこの唄を聴く。喉の渇いた小さな世界
の峡谷の縁から理想郷の四月を見つめると、僕は必然的に運命を超越しなけれ
ばならないことに気付いた。僕の全身を冷たい風が横切る。風と風の合間に僕
はビックバンを連想する。そして僕はもう運命から逃げないこと、この感情を、
心象を、四次元以上で表現することを何処かの世界の神様に誓ったのだ。
瞼を閉じれば、アイヌ民族の夜の踊り、そして民謡が想起される。脳味噌や
鼓膜が上手く機能しない人々にも彼等の伝統は伝承されていく。「死にたい」
と心願している風が僕の耳の中で小さな渦を巻く。僕は君達のことを何でも知
っている。何故なら僕の前世は神様の脳味噌だったのだから。有り余る力、持
て余す悲しみ。僕は君達の思考の上空を常に飛んでいると思っていた。という
のは大きな間違いであり、僕はつい先程、夜明けが来る前に飛行場から離陸し
たのだ。伊勢海老が僕の心臓の形をしている。僕の口の中はミュータンス菌の
戦争跡地で一杯だ。何故なら僕は君達いや、詩の言葉達を生む為に沢山の栄養
素が必要なのだから。
偉そうな僕の発言に十年前の恩師達は絶句する。偉そうな僕の文章に現在の
恩師達は憤激する。死に近付いた人間がぽつりと呟くよ、「君はいつも時間を
気にしているね」。僕は彼に反抗する。「君は時計盤の外れた時計塔のようだ」、
と。彼は僕に暴力をふるい始めるが、僕は彼に、「君はモラ男ばかりだと思っ
ていた」と殺意を押し殺しながら罵倒する。罵倒する、ったら罵倒する。
愛しき女性が僕に改行を求めた。美しき女性ではあるが、彼女は「愛しき」
女性なのだ。僕は彼女に僕の心の形をした伊勢海老を塩で茹でてもらい、それ
を真っ二つに割り腹の肉を卑しい程に頬張る。するとミュータンス菌は死滅し、
彼女が僕に溶け込んだ後、何らかの喪失感を生まれて初めて味わう。僕はこの
喪失感を一生、解き明かすことはできないであろう。網罠に掛かった伊勢海老
の宇宙人が言うよ、「お前の心を一生惑わし、擽らせてやる」、と。僕は彼等
について考察し、単なる僻み、妬みに苛まれていることに大爆笑し、長靴の底
でぐりぐりと踏み潰し、大して硬くもない甲殻を粉々に砕いた。
さようなら、超越された跳び箱達よ。さようなら、絶望の欠片達よ。新しい
中世界が僕を出迎え、何らかの形で僕の左手は冷え切る。旧世界が、氷河時代
が僕の涙を孤独にする。伊勢海老の甲殻の破片は凍り付き、僕の右手は春を迎
え、パソコンの心臓、太陽から無償の熱を浴びる。僕は氷河期の死刑人、新中
世界の死刑執行人です。瑞々しい伊勢海老の肉の川、せせらぎ。中庸の境界線
は二次元、それとも三次元？ そうです、僕は四次元です。蒲公英のポンポン
がしゃんしゃんと鳴り響く聖なる夜。リズミカルな躍動する律動。Ｓ．Ｔ．Ｐ
ＬＥＡＳＥ。夢への番人達は僕に更なる超越を求めていますよ。
興奮した悲しみ。現状、遺された物に甘んじる僕。息を潜めるストーリー・
テラー。左手が右手に愛を求めて居る。ハイデガー、ヴィトゲンシュタイン？
二つは性交し、何も生まずにバスルームのシャワーによって、流された死骸は
植物の恵みと共に排水溝を伝い、下水処理場に赴き、ハロー、グッバイ、小さ
な世界の峡谷の喉を潤す。ぼ、僕の喉さえ。神風特攻隊のことを想うと胸が痛
む。ひどく、深く。「君には我慢強さが無くなったね」、また一歩死に近づい
た鏡に映る僕の醜い心は言うよ。かっぱえびせん。
ｗｏｍａｎ
うねる心臓の道を行く。アップダウンの激しさ。オフロード車が僕の背中か
ら脳天にかけて右タイヤ二つで轢いて「うさぎとかめ」のゴールを目指す。熱
風が心臓の道をうねり、僕の心とは如何なものか？ と自問自答させられる。
さようなら、凶悪宗教団体。僕は天国行きの地下鉄のシートを独占し、女性が
ヘロインでイカれた男女四人組に転ばされた現場に遭遇する。ピンクフロイド
のデジャヴ。これは、「狂気」だ、と僕の本音は地下鉄を照らすトンネルの灯
りに照らされて居る。高校の重要な式典に欠かせない赤と白のツートンカラー
の垂れ幕にその女性の遺体を包む。心は常に己の盾とならなければならない、
と僕の本領を発揮させてくれない詩作品は語るよ、僕の鼻腔から飛び出した二
本の地下鉄は、一本は残尿感を解消させる為のチューブとなり、もう一本は心、
つまり新たなアイディアに満たされた迷子のリトル・キャットの脳髄と化する。
散文さんよ、僕の心を開いてくれてどうも有り難う。
海が在る。川が在る。心の防波堤？ 僕は涙する。曜日の消えた世界に現実
も、非現実も在りはしない。ただ、在るのは、僕の影の抜け殻だけ。１９０７
年に西欧の海岸都市は水没しました、そんな記述は何処にもありゃーしません。
と、小学六年生の僕の女性担任は全面否定し、夜中、旦那と如何わしくない行
為を働く。どうして？ 自転車屋の駄菓子屋さんの女性店主は言うよ、「私達
は埃塗れの天使なのさ」。
水道水。クリームソーダー味の粉薬、を、生涯を終えたばかりの女性の口の
中に注ぎ、僕の小指でその粉薬が完全に溶けるまで何度も何度も掻き回す。「僕
達は死にました」、セピア色の空に短冊を掛け、ただ誰かの太陽光だけが僕の
平野と眼球を乾かしてくれる。「何が正しくて」、「何が正しくないか」？ 疾
走するしか無いですね、と大学教授。僕と彼は考古学について考察する。彼は
時価千億円の人の心の化石を金庫に入れ、山口県の壇ノ浦にわざわざ入水しに
行く。「詩への想像力とは、結局は宇宙と同じく有限であるはずだ。何故なら、
其れが文章となりラヴェルの水面に書き記されるからだ…君は一体、何が私達
を救うと思っているのかね？ 金か？ 金なのかね？？」。僕は乾涸びた眼球
を現実から遮断する。
瞼の裏には幻想的な世界が広がっている。地下鉄で命を落とした女性は、終
電後の電車倉庫の中で、命を僕の左手の灯りを頼りに探している。いつまでも、
何時までも。僕はその様子を、時間を気にせず文章化する。さようなら、携帯
電話よ、左足の踝に見えない足枷の鉄球があらゆる女性の氷の仮面を砕き、僕
を無力感に陥れる。僕は幸せ者です、僕は純粋無垢な心の持ち主です、僕の人
影は偽善者、又は猜疑心の強い壇上の権力者です。うねる心臓の道は黒霧がか
かり、イグアナが目玉をぎょろつかせます。心臓の下半身に苛立ちます。生物
の時間は終わりです。これから私はパンストを脱ぎ、グラウンドの登り棒を使
ってストリップを披露します、と白亜の女性は僕一人にだけ語り掛ける。蛇が
彼女に纏まり付いており、舌を閻魔大王に抜かれた、生涯を終えたばかりの女
性はクリームソーダー味の蘇生薬を胃に流し込むのです。
寂しい芝生の為の午後。ストレートティーと愛犬さえ存在すれば、この冷た
い.に鳥肌など立てずに済むのに。僕は窓際の壁に凭れ掛かり、受験生の頃の
作品名：ｔｒａｎｓｃｅｎｄｅｎｃｅ 作家名：丸山雅史